むーしゅ

水曜日のエミリアのむーしゅのレビュー・感想・評価

水曜日のエミリア(2009年製作の映画)
2.6
 Ayelet Waldmanの小説"Love and Other Impossible Pursuits"を原作とした作品。米国では"The Other Woman"という別タイトルで映画は公開していますが、英国では小説のタイトルそのままとなっています。正直どちらのタイトルもパッとしないので邦題の「水曜日のエミリア」はなかなか良いんじゃないでしょうか。今となっては水曜日のカンパネラが頭を過ってしまいますが。

 ニューヨークで弁護士として働いていたエミリアは、妻子持ちの上司ジャックと恋に落ち、ジャックの離婚成立を待って再婚。しかしジャックの元妻で小児科医のキャロリンに何でも報告してしまう息子ウィリアムとは上手くいかず、またジャックとの間に授かった子どもが出産後3日で亡くなってしまう。何もかも全て上手くいかないと苛立つエミリアだが・・・という話。 今思えばNatalie Portmanはこの映画で略奪婚ってありだと思ったんですかね。本作公開の翌年、「ブラック・スワン」で共演したBenjamin Millepiedと婚約・妊娠を発表しましたが、当時Benjamin Millepiedには同棲している恋人がいました。恋人ならセーフという考えもありますが、エミリアと同様で相手からしっかり奪っています。またそもそもハーバード出身という高学歴な点も似ているし、意外とエミリアは彼女の本性を表しているのかもしれません。Natalie Portmanのきれいだけど幸せを掴めなそうな感じが役にすごいはまっています。

 さて本作ですが、やはり非道徳的行為から始まる物語は共感が難しいですね。そもそも視聴者が不倫&略奪婚で今の生活を手に入れたエミリアに自分自身を重ねて映画の世界に入り込むというのはかなり難易度が高いです。また彼女は子供を亡くしたことへの被害者意識が強く「なぜ誰も優しくしてくれないのだろうか」という思いが前面に出ていますが、これは不倫&略奪婚というハンディキャップを持つエミリアを主人公に据えるための要素であるので、純粋に可哀想とはどうしても思えません。彼女の友人たちがもう少し冷静さを彼女に与えてあげられるくらい"Calm Down"要員としての役割を発揮できれば良かったのかもしれませんが、ほぼ機能しておらずなかなかわがままな主人公に仕上がっています。まぁでもこういう人って現実にもいます。また周囲の大人もそれぞれ癖が強いので、視聴者側からすると早々に登場人物の誰かの目線で見ることは諦めてしまいます。まともなのは息子ウィリアムだけで、彼が一番冷静でした。

 そうなると物語を俯瞰的に見てしまうのですが、それはそれでまた問題が発生します。私が一番可哀想思考からエミリアが脱却することを望んでいたのですが、最終的に時間が解決したかのような、気付くというより落ち着くという言葉が似合う物語なのです。散々エミリアをわがままキャラクターとして描いておきながら、エミリア・ジャック・キャロリンは特に変わらず、息子ウィリアムが物語を上手くまとめています。子供に伝えたいメッセージや重要なことを言わせると得てして涙溢れる感動作になりますが、本作は元々ウィリアムが一番大人なわけでそれを受けた一歩先がどうなるかが見たいんですよ。大人の事情の解決を子供だけに頼るのは、お涙頂戴に走ったなという印象もうまれますしちょっと物足りないです。ただ我が子が死んだ原因がもし自分にあったとしたらどうするか、またそれを自分しか知らなかったら、という問題提起とその答えの模索という部分を切り取ると考えさせられたのは事実で、見なければ良かったということは無かったです。そこがしっくりくると好評価につながるのかもしれないです。

 この作品当初はJennifer Lopezが主役を演じる予定だったそう。J. Loが演じると良い悪い両方の意味でもっと嫌な女になっていそうで、 J. LoよりNatalie Portmanが正解かなと感じました。
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