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サファイアのFilmomoのレビュー・感想・評価

サファイア(1959年製作の映画)
4.7
①ロンドン郊外で女学生の惨殺死体が発見され、捜査が始まるが、容疑者らしき人物は数人浮びあがり、決め手がない状況が続く。被害者の女学生サファイアは、妊娠をしており近々婚約者の学生と結婚を控えていたが、裏では派手な下着を身に着けて夜の街で過ごしていた。やがて捜査担当の警部は、サファイアの秘められた行動を追って行くと有力な容疑者にたどり着く。今では良く見るパターンの展開であるが、この作品が単なる推理映画とならないのは、サファイアの兄が黒人の医師で、サファイアは混血児だったという設定である。婚約者は白人だが、サファイアが夜足しげく通っていた店は黒人が多くたむろする場所だった。さらにこの映画がアメリカ映画ではなく、イギリス映画だという事が面白くしている。②手がかりを元に警部と一緒に観客も犯人を追っていく。一連のアガサ・クリスティーものと同じ「本格もの」の展開で、コロンボのような犯人側の視点を描く「倒叙形式」ではない。従って観ている方も画面上に描かれる数々のヒントを元に推理を楽しむ。ありきたりの犯人だと名作にはならないから意外な犯人を探すのだが、犯人の動機が分からないのである。③ベイジル・ディアデン監督はジャンルを問わない職業監督で本作はその中の1本程度でしか語られないだろう。しかしオリジナル脚本のジャネット・グリーンは50年代に多くの犯罪映画やサスペンスの脚本を書き、その後ドリス・デイ主演のスリラー「誰かが狙っている」の原作、ジョン・フォードの遺作「荒野の女たち」の脚本を書いた。(ジャネットの映画界デビューは女優としてだった)本作は英国が生んだ女流シナリオライターのパイオニア、ジャネット・グリーンの力作として名を残すべきだろう。
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