ふじたけ

サラバンドのふじたけのレビュー・感想・評価

サラバンド(2003年製作の映画)
4.7
まさかメディアテークに置いてあるとは.....
ほとんどが会話シーンの長回しでこれでもかというくらい喋るのが面白い。だが、不思議なことに眠くなることはなく、画面の中にするりと自分が入っていくような感覚にとらわれた。普通の監督がやったらおそらくダレてしまうだろう。
また、主人公の女性は観客側、神の視点に立っている構造も面白い。傍観者としての彼女が状況を浮き上がらせていくのだ。父と娘の愛、親子の愛憎、全てを否定する元夫、そして死.....それらの様子を私たちに伝えるだけで、親から孫までの3人にはほとんど干渉しない。そんな彼女が元夫を抱きしめるシーンからはベルイマンの死に対する考えがうかがい知れる。
愛、死、憎しみ。それらが孤独という人間の本質を浮かび上がらせる。そんな中でどう生きればいいのか、何にすがればいいのか。
結局、自分にすがるしかないのだ。今ここに確かに存在している自分。その自分にすがることは他者を含めた世界にすがることと同じだ。他者へ向けられた感情や世界への評価、これら全ては自分に向けられたものである。なぜなら、この世界は自分の中にあるから。一切は一なのだ。
解釈が分かれるであろうラストシーンが秀逸。やっぱ映画はこうでなきゃダメだ。離乳食であるべきじゃない

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