ガリガリの手足にショートカット、まるで少年のようなミシェルウィリアムズがルーシーと戯れる姿に並走していたカメラは、旅の途中のほんの数日間、不意に襲われた不運によって前に進めなくなってしまった彼女とともにその動きを止めた。
出会いからさりげなくウェンディを見守っていた警備員は、彼女が再び戻ってきたときも変わらずそこにいてくれるだろうか。
明日のことなど誰にもわからない。
ハリケーン・カトリーナですべてを失った人々を見て着想を得た作品は、はからずもリーマンショックで呆然とする人々が最初に観ることになった。そして今はコロナによって生活の苦難を強いられている人々に捧げられる。いつの時代も理不尽が世界から消えることはない。
唯一の劇伴、ウェンディが歌う鼻歌がクレジットで「ルーシーのテーマ」となっていたのを見て急に泣きそうになった。
苦手だったミシェルウィリアムズ、この作品でちょっと好きになった。