SatoshiFujiwara

ウェンディ&ルーシーのSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)
4.5
冒頭の列車のショット→ウェンディが画面右に犬と戯れながら進んで行くところをロングの横移動で撮り、そこへ犬へ話しかけるウェンディの声とやはりウェンディの何気ない鼻歌がかぶさって流れて来るのだが、なんてことのないこのシーンの儚さの感情はなんだろうね。全編に漂う寄る辺ない停滞感、無益な時間を何とかやり過ごしてる感がたまらなく胸を打つ。動きたいのに動けない「反・ロードムービー」。ウェンディは無事アラスカに辿り着けたのだろうか。戻って来て犬のルーシーを引き取れたのだろうか。優しい警備のじいさんと再会できたのだろうか。車は何とかなったのだろうか。全てが続いて行くこの感じは確かに人生を切り取ったかのよう。

(20210730_シアターイメージフォーラム)
2度目。ウェンディが繰り返し歌う鼻歌のメロディが万引きするスーパーマーケットのBGMでも重なるようにさり気なく流れてきたり、車の修理屋がウェンディとの話の間に電話相手と話す意味ありげな謎の会話、あるいはくたびれた警備のおじさんが連れていた女の奇妙に不釣り合いなケバさ、寝ているウェンディの横に唐突に登場する妄想的なヤバい男など。割り切れない意味不明の「外部」や妄想たくましくさせる何かがそこかしこにまんま投げ出されて噴出している。俺はこういうものを映画で観たい(体感したい)のだ。痺れる。
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