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ヤコペッティのさらばアフリカのLudovicoMedのレビュー・感想・評価

3.4
テレビじゃできない秘境ドキュメンタリー100連発inアフリカ。

『世界残酷物語』でモンド映画というジャンルを爆誕させたヤコペッティが「アフリカズ、ファースト!」なポテンシャルで独立期からの歴史を物語る残酷ドキュメンタリー。
ドキュメンタリーは通常、現場をリアルタイムにカメラを向け、民の声をインタビューしたりすることで成り立ちますが、そこに作り手側の"演出"が加わることで"ヤラセ"に変わる。この映画的ウソを逆手に取って完全再現した"モンド映画"という今は亡きジャンルの帝王がヤコペッティだ。

これがまた、ヤバすぎる映像を連発してきます。
例えばアフリカの先住民族が行なっていた動物捕獲術を伝えるため、「実際にやってみた」とゾウやシマウマをホロコーストしてしまうのだ。
単に再現といっても、過去の風習を現代人で共有することに始まり、それを徹底再現(実行)すると、むき出しの暴力や皮肉が浮かび上がってくる。
それも、かなりの尺を使って集団で槍の串刺し、そしてコッポラ監督もベタ惚れしたらしい『地獄の黙示録』でお馴染みの大型動物をナタで首チョンパし、内臓を抉り出す衝撃場面やまあ、枚挙にいとまがない。ただナレーションでそこに不謹慎なツッコミを入れて反面教師を避けブラックユーモアとしておとす所がヤコペッティらしい作風です(勿論、その悪ふざけに気持ち悪さを感じる意見もわかる)。

難しい顔せずここでしか見られないアフリカ史を提供しますよ、と好奇心に訴えかけるヤコペッティだが、唐突に「この貴重な虐殺映像を前に、政治家の目にはどう映るだろうか?哀れみより恥を感じるだろう」なんて深イイ台詞が哀感たっぷりに挟まれたりもするのだ。

そして映画が後半へ移ると内戦、動乱という人間同士の対立へ突入しますが、ここから、ヤラセと実録の境界線が曖昧になり、観賞がキツくなります。ヘリからの下界を見下ろす俯瞰のカメラワーク等、地獄の黙示録の元ネタが伺える中、ヤラセかな?とも感じられる、死刑直前の殺伐とした雰囲気から、路上に転がる死体、人間の切られた手首の山描写はとてもじゃないが肺腑をえぐられるほどに残酷で見てらんない。

しかしながらヤコペッティはその再現魂が度を越しているため、アフリカそのものを俯瞰して魅せる広大な風景、なんかスピリチュアルな自然描写等の癒し映像やトンデモスケールで描かれる独立宣言集会の巨大な混沌といった"むき出しの映画的パワー"にやられてしまうだろう。
それこそデヴィッドリーンの超大作さながらなスペクタルが、本来持つ無茶な実写撮影とモンド映画の撮影法が相まって、迫力満点の興奮を味わえます。

確かにこれはコッポラがやりたがるのも納得のスケール感でした。

ちなみにフェリーニがモンド映画に手を出すと、フェチズム全開なフェリーニ箱庭ローマが構築されてました。
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