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パリ、テキサスのYYamadaのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
4.3
【戴冠!カンヌ映画祭パルムドール】
【ロードムービーのススメ】
 ~旅を通じて人生を紡ぐ~

◆旅の目的
 1⃣ 失踪から帰還した自分の記憶を
   取り戻す旅
 2⃣ 息子との関係再構築と
   失踪したままの妻の捜索
 
◆旅の工程
 1⃣ テキサス州→ロサンゼルス
 2⃣ ロサンゼルス
   →テキサス州ヒューストン

〈見処〉
①ドイツ人監督による、
 ロードムービー最高峰作品
・『パリ、テキサス』(テキサス州パリス」の意)は、1984年に製作された、ドイツ人監督ヴィム・ヴェンダース監督による、西ドイツ・フランス合作映画。脚本は、俳優サム・シェパード(『ライトスタッフ』)が務めている。
・舞台はアメリカ・テキサス州。唐突に、4年間行方不明になっていた兄トラヴィスが入院したとテキサスの病院から連絡を受け、弟のウォルトは、兄を迎えにテキサスに飛ぶ。久しぶりに再会したトラヴィスは身なりがボロボロ、廃人寸前の様相。
・一切言葉を話さず、連れ帰ろうとしても逃げ回っていたトラヴィスだったが、次第に正気を取り戻していき、ウォルトの自宅にて、7歳になった一人息子のハンターと対面する…
・本作は、テキサスを一人放浪していた男による家族との再会と別れを描き、第37回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール(最高作品賞)を受賞。
・アメリカを舞台とした、最もアメリカらしい映画をドイツ人監督がが作ったことは、ハリウッドに大きな衝撃を与え、旅路により自分自身を見直していく本作構成は『レインマン』など、後続の作品にも影響を与えた、傑作ロード・ムービーである。

②二部構成の旅の軌跡
本作は2つの旅を通じ、主人公トラヴィスの変化を描いている。
・前半は中年の兄弟旅を通じ、トラヴィスが自分を取り戻す姿を描かれている。当初、全く喋らなかったトラヴィスに手を焼く弟ウォルトであったが、トラヴィスが両親が結ばれた地、テキサス州のパリスを目指していたことがわかり、次第にコミュニケーションがとれるようになっていく。
・トラヴィスにとってパリスは、心の平安を求める、約束の地であったのだ。
・後半は、一人息子との妻探しの旅路を通じて、家族愛を再構築していく物語。すっかり正気に戻ったトラヴィスが、息子との関係を取り戻していく。
・また、妻との再開場所はなかなか衝撃的。テキサスのど真ん中にこのような場所があったのか??自身の素性を語らず、妻と対話していく場面は非常に見応えがあった。
・家族愛を取り戻したトラヴィスが終盤で下した彼の決断は、自分から逃れるために彷徨った4年間の失敗を繰り返さないようにした、家族への愛情がなせる業だと感じるラストシーンであった。彼の心は平安の地=パリスにあったはずだ。

③結び…本作の見処は?
○: 冒頭~前半部のアメリカ原風景がとにかく美しい。
○: ちょっとした動作や仕草を通じて、各登場人物それぞれの心情が丁寧に描かれている。
○: ユニークな構図が印象的。とくに兄弟旅のドライブシーンにて、レンタカーのフロントガラス越しから撮影された、ドアミラーを中心に登場人物と車窓が左右配置した構図は素晴らしい。
まる
○: マーゴット・ロビーを彷彿とさせる、当時23歳の早熟ナスターシャ・キンスキーの圧倒的な美しさ。当時のトップクラスでは?
○: スライドギターの名手ライ・クーダーによる劇中曲は乾いた大地にマッチしている。
▲: ほぼ廃人状態だった主人公トラヴィスが平常心を取り戻す様が急すぎる
▲: 行けず終いのテキサス州パリを作中で見たかった。
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