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パリ、テキサスのmegurosのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
4.5
名作再見。何がいいって全て良い。

全てのロケーションは映画的な空間として用意されていて、例えばトラヴィスとハンターが旅に出ることを決めるハイウェイの下、ドライブスルーのような銀行、ヒューストンの裏びれた路地や駐車場、ハンターが母親を1人で待つ開口部が広く取られたメリディアンホテルの一室等、キャラクターの関係性やシーンを象徴的に表現。場面設計自体がすでに何かを物語ってさえいる。青空に映えるウェスタンブーツや青いハイヒール、無線機やカセットレコーダー、そして一方向からしか見えないマジックミラーといった道具立てにしても、モノの特性が物語を推進する役割として周到に配置されていてどのシーンも忘れ難く、特に映画後半はその画面に無駄のない美しさが宿っている。

「テキサスにあるパリ」は元々は父親の冗談だったという話も、後半ではそれが単なる美談ではなかったことが明らかになり、その土地を買って一家団欒暮らすという夢を見ていたトラヴィスの、さらには映画冒頭の砂漠のような、すっぽりと何かが欠けた悲しさに繋がっている。空港を望めるLAの高台に建つ弟の家にしても、一見完璧なのだけど飛行機音がうるさいとか、もう本当に見事と言うしかないし、緑や赤を大胆に取り入れた色彩設計、ライ・クーダーによるスライドギターの音色がその悲しさをサウンドでも引き立てている。
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