Yoko

パリ、テキサスのYokoのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
4.5
テキサスの荒野を亡霊にように彷徨う、ぼろぼろの背広を羽織った赤い帽子の男。
携帯しているポリタンクの水も空になった彼がたどり着いたのは…。


良い作品を見させてもらった!という感謝の念がおのずと沸き起こる良作。
テキサスの荒野の背景、そして地平線上に浮かぶ青空はハリボテのようで、主人公の空虚な心情そのもののようだ。
なんと素晴らしいロケーション。美しさの裏返しに潜む残酷ここにあり。

今作で「Paris」はイマジナリーな存在の象徴であるはずなのに(テキサス州にParisという地名は実在しているが)、彼女が働く「あの場所」はどこかヨーロピアンな空気感が漂っているのが不思議だ。
浮世を思わせる妖しい照明が光る、人々が奥底に抱える妄想を切り取ったともいえるあの空間。
諸所に登場する照明は映画の世界に引き込むという点においても最高なのだけど、優しさと侘しさがないまぜになっているような光の見事なさまを一言では言い尽くせない。

お互い分かっているはずだった関係の男女が会話を交わす告解の場、そして理解して…。
今作の良いところは本当よりどりみどりだ。
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