孤独に荒野を彷徨う男トラヴィス。
4年ぶりに再会を果たした息子のハンターとともに最愛の妻ジェーンを探す旅に出た彼は、一体どこへと辿り着くのだろうか?
「ベルリン•天使の詩」などの作品で知られるヴィム•ヴェンダースが監督を務め、第37回カンヌ国際映画祭でパルム•ドールを受賞した傑作ロード•ムービー。
派手なシーンや物語の起伏はない。
ライ•クーダーによる気だるく哀愁の漂うギターと、自然光を満遍なく活用した深みのある映像、苦々しくも僅かな温かみを感じさせる物語をじっくりと味わうような正に"大人の作品"だ。
また、静かに淡々と流れていくような物語の根底にどっしりと腰をおろしている「人を愛するとは何か?」というテーマが非常に深く、凄まじい余韻を丸一日引きずる羽目になった(その結果仕事で多量の不良を出し上司の雷が落ちたのはまた別の話)。
愛するが故に妄想を押し付け、愛するが故に傷つけ、愛するが故に愛は破滅する。
残酷な真理を叩きつけられた男は、今日もまた乾いたテキサスでパリを求めて彷徨い歩く。
孤独な男は最後に何を見つけたのか?
何度も何度も鑑賞し、また新たな発見を求めて鑑賞したくなるような奥深い作品だ。