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パリ、テキサスのKKMXのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
4.3
切ない映画でした。いや〜、なんとも切ない。

主人公トラヴィス。未熟な男です。しかしこれは非難の意味合いではない。彼はどうしても成長できない、成熟できない悲しさを抱えているように感じられます。愛を切望しても壊してしまう、そんな自分に絶望しているのでしょう。
そして、タイトルにもなった、彼の故郷パリ、テキサスに戻ろうとする姿から、原家族との関係の傷つきが、彼の成長を止めていることが推察されます。父と同じような妄想に取り付かれていると感じるトラヴィスは、息子ハンターにも、自分が体験した傷を負わせてしまうという恐怖を感じていたと思います。ハンターに自分の両親のことを語る姿は、なんか切ない。彼はクライベイビーです。

元妻のジェーンとトラヴィス、一見年の差カップルですが、精神的には近い2人だったんでしょうね。ジェーンもおじさんをパートナーに選ぶくらいだから、安心感を必要としていた人なのかな、と思います。しかしパートナーは体はおじさん、心はベイビーだったため、上手くいかなくなるのも宜なるかな、です。

しかし、一番切ないのは弟夫婦、とくに妻のアンだと思います。ハンターを実の子として、本当に愛して育てたことが伝わってくるが故に、辛すぎますね。
ハンターの布団がスターウォーズなんですよね。アンは宇宙好きの彼の嗜好をちゃんとキャッチしていて、あの布団を選んだのでしょう。もしくは一緒に選んだか。きっとあの布団が家にやってきた日にハンターは超喜んだと思うんですよ。そういう、すごく大事な積み重ねが伝わってきたが故に、本当に胸が苦しい。
ハンターが母と別れたのが3歳。愛着対象は確かに実母ジェーンでしょう。トラヴィスも問題あるけど優しい男だから子どもは見抜いて懐きますしね。
とはいえ、弟夫婦の話は残酷だと感じています。アンの気持ちを想像すると本当に切なく心苦しいです。

キャストについて。ハリー・ディーン・スタントンはすげぇ顔。オープニングのインパクトはスゴい。ナターシャ・キンスキーも素晴らしい美女でしたが、個人的にはアンの方が好きです。
そして一番嬉しかったのは、のぞき部屋のスタッフとして、伊達男ジョン・ルーリーがちょこっと顔を出していること。ジャームッシュ初期3部作好きとしては思わすニヤリとしました。また元気になって戻ってきてほしいですね。


名作と誉れ高い本作ですが、確かに素晴らしい映画でした。マジックミラー越しのトラヴィスとジェーンのやりとりなどは、すごい説得力で迫ってきました。
しかしながら、トラヴィスの物語にはがっつり共感できず、むしろ弟夫婦に感情移入していたため、ハマるまでには至りませんでした。

あと、146分は長い!ファニアレ以降、長丁場は決定的にダメだとわかりました。120分を超える映画は基本苦手と判明。空族映画は例外ですが。正直、大傑作『東京物語』(135分)ですらちょっと長ぇな、と思ったくらい。
本作は、最低でもあと30分削って欲しかった。