shingo

パリ、テキサスのshingoのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
3.9
もはやロードムービーの代名詞となっているヴィム・ヴェンダースの代表作を初鑑賞。

冒頭の美しい荒野のショットとライ・クーダーの哀愁漂う音楽。そしてこの荒野を独りただ彷徨う男。このシーンが本作の魅力を全て象徴しているようで、完全に作品に引き込まれる。

ちょっとしたカーチェイスやマジックミラー越しに語りかけるシーンなど印象的なシーンはいくつかあるが、ストーリーは割とありがちで景色の追い方もロードムービーとしては地味。内容自体は重いテーマを扱っていて登場人物たちはみなその葛藤に悩まされるが、それでもただ静かに物語は淡々と進む。

この静寂な世界観こそが本作の最大の魅力で、147分という短くない時間の中で派手なアクションシーンは一切存在しない。なのに冗長には感じず気づいたらエンディングを迎えていた。映画には過剰なドラマも複雑なプロットも必要ないという事をあらためて思い知らされた名作。
shingo

shingo