"距離感"とゆうモノが視覚的に貫かれている作品と感じた。
荒野を歩くトラヴィスの孤独を空の青色を背景にロングで捉えた距離、彼の弟との心の距離、弟の妻との距離、息子との距離、そして、クライマックスでの覗き部屋のマジックミラーを通しての元妻との距離。
距離とは人と人を隔てるだけのマイナスの意味ではない。
人と人はたとえ家族であっても、節度ある距離感ある関係は必要だし、それをましてや一度バラバラに分解したトラヴィスと息子と元妻は、再び近づこうとすればするほど、もう二度と戻れない決定的な距離感に気付かされたはずだ。
覗き部屋の場面の二人の会話だけの絡みは、過ぎ去った愛情の欠片を拾い集めようとする姿が切なく悲しい。
ヴィム・ヴェンダースが敬愛する小津安二郎も徹底して人と人との距離感にこだわった。
ヴェンダースが受け継いだのはその目線だろう。