このレビューはネタバレを含みます
こんなにも切なさに溢れるロードムービーに、かつて出会ったことがあるだろうか。
不遇な人生を送ってきた脱獄犯の主人公と逃亡中に偶然人質となった少年が、お互い父親の愛情を知らない境遇を持つことで、やがて本当の親子のような愛情が芽生え始める。大方の予想がつく結末、そして主人公が目指す先には、望むものが何もないことは誰もが知ることだが、このような破滅的な生き様に何故か美しさを感じる。
本作では敢えて警察との追跡劇は脇に置き、脱獄犯と少年との心の交流に焦点を絞り、二人の人物像と結び付きを丁寧に描いたことにより、静かで味わい深い作品に仕上げられている。
決して悪人ではない主人公が、最後まで父親のような立場で少年を守り続けて息絶えるラストシーンは、観終わった後もしばらく涙が止まらなかった。