菩薩

パーフェクト ワールドの菩薩のレビュー・感想・評価

パーフェクト ワールド(1993年製作の映画)
4.5
世界が完璧であればこの世にルールなんてものはいらない。だが世界はいつまでも完璧になんてならないから我々はルールを作らなきゃいけない。けどせっかく作ったルールを守らない奴等がいるから我々は武器を持たなきゃならない。武器を正しく使えれば良いがそれすらも上手に扱えないからもっと強い武器を持たなければならない。そんな事を繰り返し繰り返しやってきたのが人類の歴史ってやつで、そんな風にしてお互い無意味に傷つけあって来たのが我々人類ってやつで、そんな愚かな人類が作ってきた世界は今日も全く完璧では無い。これは「無法」を生き抜いて来た彼の一つの到達点だと今でも思っている、この先にあるのは勿論『グラン・トリノ』である。このお話を受け入れる事が出来ない人達がいるのを自分はむしろ希望だと思う。そんな人達のおかげで世界は今日も「一定」の平和が保たれているのだろうから。けど完璧な世界を目指すにはもう少し先を見なければいけないし、もっともっと後ろを見なければならない。誰が世界に「罪」を生んでしまったのか、誰が世界に「罰」を課してしまったのか、誰が世界を悪戯に傷付けてきてしまったのか、誰が世界をこんな世界にしてしまったのか。何が正しくて何が間違えているのかなんて分からない、罪を犯す人間が悪いのか、罪そのものを憎むべきなのか、いつまでも世界の悪循環は断ち切れないのか、ならどうすれば良いのか。この映画は正解を提示するわけで無い、それでも一つ正解を探せと言うのであれば、親よ子を殴るな、その代わり抱き締め愛せ、そんな事だと思うし、そんな所に完璧な世界の始まりの一歩があるのかもしれない。何より彼はあの時確かに「武器」を手放した、そこに大きな意味を見出す作品でもあると思う。
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