しゅん

港々に女ありのしゅんのレビュー・感想・評価

港々に女あり(1928年製作の映画)
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10代のときに『3つ数えろ』のビデオを借りて結局観なかったのが呪いになったか、ずっと観ず仕舞いだったハワード・ホークス。なんでもっと早く観なかったのか。画の力も脚本の力も段違いに強くて魅せられっぱなしだった。

女好き・ケンカ好きな船乗りたちの友情を描いたこの無声映画はクラシックとして名高く、その影響はボウイの代表曲『Life On Mars?』(のSailors fighting in the dancehall〜というリリック)にまで影を落としている。
ルイーズ・ブルックスの飛び込みシーンがヤバいなと思ったら、蓮實重彦先生も著作で語っているらしい。飛び込み台を横から撮るカットからルイーズが飛び出した瞬間に台の正面下へとカメラが移り、結果美しい女の体がスクリーンから客席に迫ってくるような効果が出る。強烈なインパクトである。
スパイクとビルのコンビの動きがコミカルで、カートゥーンアニメのような愉快さ。スパイクを演じるヴィクター・マクラグレンの、ナンパする前に襟を直して船乗り帽の向きを整える動作がかわいい。港で見廻りの男を二人で騙して海に落とすところもすごく良いし、殴り殴られる様も観ていて楽しい。
テロップをただの説明に終わらせず演出に使うのもセンスいいし、いちいち気が利いていた。

しかし、スパイクとビル、彼らの間に何故友情が芽生えたかは一切説明がないのに、役者の動きと映像表現で全て納得させてしまう。すごいです。女の子はこれをみて男の子っていいなと羨ましがるに違いない。
特集上映やっているうちにホークスの映画もっと観たいけど、溝口もアピチャッポンも特集やってるしで困った。映画好きには忙しい年末年始です。
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