くわまんG

ツバルのくわまんGのレビュー・感想・評価

ツバル(1999年製作の映画)
4.5
台詞を排し、色を減らし、音と光でHopeを照らす、大人のためのDopeなファンタジー。

みどころ:
トゥバル~♪トゥバル~♪
衝撃的な夢遊音楽映像体験
主演二人の卓越した表現力
エロ要素がとっても可愛い
人類の進化への遥かな祈り
字幕ONで二周目推奨

あらすじ:
長らくランドマークを務めたその室内プールは、今や陸の孤島。都市開発の荒波は街を平らげ、幹線道路の邪魔者はそこだけになっていた。
住み込みで働く醜男アントンは、まだ外に出たことがない。オーナーである粗野な父親、世話好きな手伝いの老女、ガタガタの職場が生活の全て。
その日は珍しい来客があった。一人は成金の兄グレゴール、一人は常連客の娘エヴァ。金と性。初めて目の当たりにした快楽を前に、無防備そのもののアントンは、果たしてプールを守りきれるのか……。

コミカルでファンシーかつビターでシリアス、単色に塗り分けられた心霊ビジョンで展開される、どうにも微笑を禁じ得ないこの世界観、マジDopeです。キモくて清い童貞のドニ・ラヴァン、処女なのに小悪魔なチュルパン・ハマートヴァ、台詞も無いのに実に豊かな表情を見せます。脇も端役に至るまで皆素晴らしい。

お話は、親が子に、旧世代が次世代に、遺すべきモノについて。良かれと思ってのしつけならば、子供は必ず応えるし、逆もまた然り。子は親の、次世代は旧世代の背中を見て育つんですね。

…世代が交代するその時、未来への高揚の裏には、必ず離別の痛みがあり、どちらとも向き合わねばならない。しかも、私達が21世紀に用意した未来の地盤は、沈みゆく島国「ツバル」のように危うい。ならば、今からでも親らしく、子のために尽力して笑顔で果てよう!人類が、大海原に進化の航路を見出だせるよう…!

「私はドイツ人ですが、この映画はmade in Germanyではなくmade in Worldです。」という監督の言には、かような、世界への真っ直ぐな祈りがこもっているように感じられます。ヌルいようで、アツい一本。