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最後の誘惑のDのレビュー・感想・評価

最後の誘惑(1988年製作の映画)
3.7
遠藤周作の描くキリスト教と同じような印象を受けた。つまり、それが史実(というか、キリスト教解釈として正しい)かどうかを気にするものではなく、一つの"if"の話として楽しむことができるかどうかのみで観るべき作品ということ。
それを受け入れた上で鑑賞すると、かなりストンと落ちた気がする。魂が少しだけ浮いているような気持ちで観れる映画だった。

そして何よりボウイがいつも通り最高にかっこいいのと、ピーターのサントラが恐ろしくいい。映画を観る前からサントラは気に入ってずっと聴いていたけど、このテーマの映画のサントラにこんなワールドミュージック要素満載の音楽を使って、見事にフィットさせてしまうなんて…。ピーターはアーティスト・パフォーマーとしても当然すごいんだけど、デザイナーとして非凡な才を持っているということを見せつけられる。
聴いていると黒い煙上の闇が押し寄せてくるような気分になりそうな録音・ボーカル・サウンドスケープなんだけど、それをアフリカの民族音楽のリズムや打楽器という枠組みの中に収めることで、全体としてとても調和が取れた「心地よい不安と落ち着かない安らぎ」とか「迫り来る喧騒とそれまでの静寂」が表現されている。大地に身を投げ出した時の、小さな虫が皮膚の上を蠢動しているような落ち着かなさがあるんだけど、同時にその虫が僕の鳥肌でロッククライミングしていることを考えてしまうような。つまり自我や自由意志を保ちながらも自然の一部として自分を存在させるような。
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