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汚れなき悪戯のMOCOのレビュー・感想・評価

汚れなき悪戯(1955年製作の映画)
5.0
「お前は、良い子だ。何か望みを叶えてあげよう」(キリスト)
「天国にいる母に会わせて!」(マルセリーノ)


 50年ほど前テレビ放送で2回観たのですが、2回とも頭の部分を見逃しました。
 題名も不明のまま大人になり、レンタルビデオが始まった20歳頃にこの映画を探し当てた時は大感動でした。


 物語はスペインの田舎の教会に村中の人が集まるお祭りの日に、一人の牧師が骨折で教会に来ることが出来ない少女の一家を訪ねるところから始まります。そしてなぜこのお祭りに多くの人が集まるのかを話し始めます。

 戦争で壊れた教会を布教のために修復しはじめた12人の使徒の教会に捨てられたマルセリーノと名付けられた赤ん坊が、5才になり入室を禁じられていた屋根裏部屋でキリストと出会う奇跡のお話です。
 
 好意的な町長が亡くなり新たに町長になった男が教会を良く思っていないことから、マルセリーノの中に生まれた町長への気持ちが事件を引き起こし12人の使徒は立ち退きを言い渡されてしまいます。
 そんなことは知らないマルセリーノはいつもと同じように皆と接するのですが、使徒たちはマルセリーノを遠ざけるようになります。淋しいマルセリーノは入室を禁じられた2階の部屋へ向かいます。そこには十字架に縛られたイエスの像があり、やがてマルセリーノはイエスに話し始めるのです・・・。

 制作当時はCGがないためキリストの存在を体のパーツの大写しと影と声と目線だけで巧に表現していて、むしろ神聖な感じがあり、新鮮な感動があります。マルセリーノの「天国にいる母に会わせて」のお願いからラストシーンまでは涙が止まりません。

 劇中に流れる「マルセリーノの歌」も美しく印象的です。

 原題「Marcelino Pan y Vino(パンとワインのマルセリーノ)」、上映時につけられた邦題「汚れなき悪戯」には、違和感を感じますが、映画を観る楽しさを教えてくれた大切な映画です。

 子供の頃観た「(スペンサー・トレーシーの)山」と、この映画との出逢いが私を映画好きにしてくれました。
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