emily

ヘイフラワーとキルトシューのemilyのレビュー・感想・評価

5.0
もうすぐ小学生になるヘイフラワーは、妹の面倒をよくみて、家事も手伝うしっかり者。母親は家事が苦手で、外で仕事をしたがっていて、お隣さんに子供を取られる心配をしている。父はジャガイモの研究に精を出し、ご飯はいつも芋だ。オリンピックごっこのある事件をきっかけに家族が壊れ始める。

鮮やかな色合いの洋服に、おもちゃ箱みたいなドリーミーな世界がぎゅーっと詰まったかわいいお家。キッチンは黄色ベースで、お皿の配置やテーブルの上にチョンと置かれるフードの数々。子供部屋のアイアンベッドにブルーベースのまるで深海にいるような幻想的な空間。お花がいっぱいのお庭や、散歩道、どのカットもかわいいが溢れていて、色と柄の組み合わせが織り出す世界に子供の世界観がマッチして、予想不能な展開を見せてくれる。

子供のまま大人になってしまった両親と妹の間で、板挟み状態のヘイフラワーの健気なお祈りにキュンとする。偶然願いが叶ったり、その祈りにより母が奮闘する姿もユーモア満載でカラフルな水風船と笑顔の交差、母を守ろうとする子供の健闘ぶりなど、ただかわいいだけでなく、家族のドラマがその中でしっかり展開されている。
姉だっていつまでも良い子では居られない。彼女が本当の自分の姿を見せることで、家族は一旦崩壊に向かう。しかしその解決の方法がパン生地セラピーと呼ばれるカラフルな色のパン生地に埋もれて、ムニムニすることで心を解放していくというもの。まさに夢の世界。気持ちよさそうだし、そのあとはパンとして食べられるし、一石二鳥。そうして大人も子供から学び、大人になっていくのです。押し付けや、勝手な決めつけはその人をダメにしてしまうこと。大人も子供もたまには自分を演じるのをやめて、息抜きが必要。そうすることで見えてくることもあるのだ。
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