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第三の男のabdmのレビュー・感想・評価

第三の男(1949年製作の映画)
4.5
私利私欲のためではなく、一種悟りを開いた思想的でいて無邪気な悪を演じるオーソンウェルズ扮するハリー。
この映画でのハリーの登場は10分と満たないが、後世に語り継がれる魅力的な悪役像。
彼は犯罪行為として害のある薬品を戦争で腐敗したウィーンの街に撒いているが、大事なのはその行動の根源にあるドロドロしたもの。それは正義も背中を押せば簡単に悪に染まるというバットマンのジョーカーのような思想。
観覧者の頂上から人民を見下ろし放つ「このケシカス一つ消してもなんて事ない」というセリフに絶対悪とカリスマ性を感じずにはいられない。

建物の影からスーッと現れるやいなやニヤッと笑い煙のように消える衝撃の登場シーンは後に多くの映画の悪役登場シーンに影響を与えるほどの名場面である。


この映画は西部劇の正義を信じ、貫き通そうとするアメリカ人のホリーとそんなアメリカ人やイギリスなどに爆撃をされ正義の信念が消失したニヒリストのハリーによる、いわば"光と影"の物語。



ただ一つ。
何故ハリーはホリーをウィーンに招いたのか。
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