ナツミオ

第三の男のナツミオのレビュー・感想・評価

第三の男(1949年製作の映画)
4.5
DVD鑑賞
究極の名作映画大全集No.9
デジタル・リマスター版

アカデミー賞撮影賞(白黒部門)受賞、監督賞、編集賞ノミネート
カンヌ国際映画祭グランプリ受賞

サスペンスの古典的名作

1949年英米合作作品モノクロ
監督 キャロル・リード
出演 ジョセフ・コットン オーソン・ウェルズ アリダ・ヴァリ トレヴァー・ハワード バーナード・リー

第二次世界大戦直後のオーストリア。敗戦後米英仏ソに4分割占領されたウィーンが舞台。
アメリカ人の売れない作家ホリー・マーチンス(コットン)は親友ハリー・ライム(ウェルズ)から仕事を世話するとの誘いに期待してウィーンに到着する。
ハリーの自宅を訪ねたが管理人から前日に彼が自動車事故で亡くなったと聞かされ驚きながらも葬儀に参列する。
葬儀で知り合った英軍のキャロウェイ少佐(ハワード)からハリーが闇商売に関係していた密売人だと聞かされる。
にわかに信じられないホリーは、異国でハリーの調査を進める。

ハリーの恋人・女優のアンナ・シュミット(ヴァリ)との出会い、事件当時の目撃者から事故現場に「第三の男」が居たと聞くが、その証人も殺され、ホリーが疑われハリーの仲間達にも追われる。
瓦礫のウィーンを逃げ回り緊張が高まる。キャロウェイ少佐へ助けを求め、そこでハリーが粗悪ペニシリンの売買で多くの被害者が出ている事実と証拠を見せられる・・・
帰国を決めたホリーがアンナに別れを告げに下宿を訪問した帰路、ホリーは死んだはずのハリーと遭遇する・・・

オープニングから、当時ウィーンの酒場で流行していたチター(ギターに似た楽器)演奏。アントン・カラスの名曲「ハリー・ライムのテーマ」が終始バックに流れる。

敗戦で荒廃した市内の瓦礫の山の風景や、市民が生活に困窮する当時の世相も表現されている。

後半から出てくるオーソン・ウェルズは主役コットンも食ってしまったインパクトのある演技を見せる。

現在も語られる有名なシーン、
印象に残るシーン。
ホリーの前に暗闇の中から現れるハリーの顔半分。陰影の効いたロバート・クラスカー撮影の名場面。

その後、再度2人が面会するプラーター公園の観覧車のシーン。
高所でドアを開けるハリーが「ホリーを殺す事も簡単だ」と話すところで柱にしがみ付くホリーが突き落とされるかも⁈とヒヤヒヤした。

警察に追われてウィーンの地下水道に逃げ込んだハリーが広い下水道の構内を逃げるシーン。
最後に地上に出る鉄格子の隙間から伸びる指先に現れる絶望感。

最後に真っ直ぐな並木道が続く道路の画面手前で待つホリーを無視して通りすぎるアンナの無表情さ。
最初の脚本ではハッピーエンドだったが変更され名シーンとなった。

助監督ガイ・ハミルトンと、
キャロウェイ少佐の部下ペイン軍曹役バーナード・リーは後の007シリーズ作品で繋がりあり。

ハミルトンはシリーズの4作品監督。
『ゴールド・フィンガー』
『ダイヤモンドは永遠に』
『死ぬのは奴らだ』
『黄金銃を持つ男』

リーは初代M役
『ドクター・ノー』〜『ムーン・レイカー』までシリーズ11作出演

名作を堪能させて頂きました。

AFI(アメリカ・フィルム・インスティチュート)選出の「アメリカ映画ベスト100」(1998)の57位に選出。
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