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トム・ヤム・クン!のdm10foreverのレビュー・感想・評価

トム・ヤム・クン!(2005年製作の映画)
4.1
【象はどこだぁ!!】

それはまるで「るろうに剣心~京都大火編~」の四乃森蒼紫が「おぬぉれぇ、ぶぁっとうさいはぁ、何処へ行ったぁ!」と何度も連呼しながら探し続けるかのような、悲壮な追跡・・・。

って事もなく、ひたすらターミネーターのように悪い奴らをボコボコにしながら進む「無双シリーズ」のような映画。

久し振りの再鑑賞ですが、以前レビューを書いた「マッハ!!!!!」で一躍「マイフェイバリット」に君臨したトニー・ジャーが今回もキレッキレです。
今作ではもはやトニー・ジャーを止められるものは存在せず、ひたすら「腕ポキ」「足ボキ」「脳天パコ~ン」が繰り広げられます。

ストーリーとしては「マッハ!!!!!」同様、大切なものが奪われる→取り返しに都会(今回は外国)まで行く→敵はメチャクチャ数が多いのにトニー・ジャーはたった一人という定型プロットですがご心配なく。ちゃんと予定通りに「トニータイム」が始まります。

で、やっぱり佇まいがブルース・リーと重なるんだよね。
クンフー(ジークンドー)とムエタイだから戦闘スタイルなんかは全然違うんだけど、ピンと張り詰めた空気感とか、一撃の切れ味とか、相手が一歩たりとも入ることを許されない絶対的な距離感とか。
基本的に「くだけた役」よりも「ストイックで不器用な役」のほうが似合っているから、作品的な「見せ方」を心得ているんだろうな・・・と。

実は、この辺はジャッキー映画にはあまり感じないテイスト。
いや、ジャッキー映画はそれはそれでありなんですよ、誤解がないように言うと。
ただ、バトルシーンを「魅せる」ことに主眼を置くのか「倒す」ことに主眼を置くのかで雰囲気も当然変わってくるだろうし、ひいては物語り全体の色合いにも影響してくるよね。
ジャッキー映画は「カンフーシーンもストーリーの一部」のような扱い方だけど、ブルース・リーやトニー・ジャーは「ストーリーはあくまでもバトルシーンまでの前菜」程度。
だから、極端な言い方をすれば後者はバトルシーンだけ切り取って見ても成立するくらいの造り。
逆にジャッキー映画はそこだけ切り取ってもやっぱり物足りない。
これはどっちが良い悪いの話ではなく、それぞれの良さだと思っている。
いくつも散りばめられたバトルシーンのベストは、やっぱり燃え盛る寺院でのカポエイラマスターとの対決ですね。
あそこでは3人と戦いますが、このカポエイラの使い手がメチャクチャかっこいい!
そして強い。今までの映画だと、動きはカポエイラなんだけど、戦いにイマイチ活かしきれていないというか、左右にユラユラ揺れるだけがカポエイラではないぞえ!って素人のこっちが突っ込んでしまうものも多かった中で、今回の彼はマジで強い。それもキチンとカポエイラで。
これぞ、異種格闘技戦だよ!
あと、タイ版「1917」と誰かが呼んだか呼ばないか、螺旋階段での4分間ノンストップワンカットバトル。これも見応えありますわな~。
そしてクライマックスは伝説のノンストップ49人斬り(アメリカ版では更に多い70人斬りだったらしい)は、もう凄いの一言。
この人はどんだけ身体能力が凄いのさ・・・と、お口あんぐり状態です。
いくらショッカーの戦闘員なみの弱さとは言え、的確に相手の関節を「ポキッ」と砕く爽快感。ここまでいったら、あのシリアスフェイスすらも反動で笑えてくる。

あ~生まれ変わったらトニー・ジャーの強さとウォン・ビンの顔が欲しい(笑)。

ストーリーはあってないようなものかもしれないし、追いかける目的は象だし、ラスボスはオカマちゃんだし、良い感じでタイの魅力がてんこ盛りのような作品。
それでいて、前作以上にパワーアップしたアクションシーン。

やっぱりトニー・ジャーは凄いわ。
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