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恐怖への旅のryosukeのレビュー・感想・評価

恐怖への旅(1943年製作の映画)
3.5
69分と短い上映時間に種類の少ないセットとB級感満載の作品。画変わりさせるために一生懸命乏しいセットを歩き回るのが涙ぐましい。ヒロインもあまりヒロインっぽい顔ではない。
いちいちダラダラとしたどうでもいい会話が挟まれるので70分以下なのに全然スピード感がない。車がクラッシュした瞬間はやっと来たか〜という感じ。
窓の外での戦闘は中々緊張感があるが、逆に言うとそこぐらいしか見せ場はないかな。
冒頭のなにやら物騒な様子の男と調子の悪いレコードの音の描写は不穏な雰囲気で、この時点ではまあまあ期待感もあったのだが、凡作かな。この描写は一応伏線にはなっている。(このアバンタイトルはウェルズによるものであるらしい。なるほどここは魅力的だもんな)
殺し屋の太った男(ジャック・モス)は相当不気味な面構えで良いな。
一流の殺し屋であるはずなのに、主人公と何度も正面から見つめ合うのでそれで良いのかとバカバカしくなってくる。
護衛をあっさり殺して騒ぎにならないのも不自然だし、それなら主人公もさっさと船内で殺せばいいじゃん...とツッコむだけ無駄だろうか。
寝っ転がって馬鹿みたいに笑っているだけの船長が四カ国後を話せる設定とか笑いどころなのかもよく分からない。
冒頭の手紙のナレーション(危機に陥っていることを伺わせる)がどこに繋がってくるのかと思っていたが、最後に安全になってから書き始めて破り捨てるという拍子抜け感。「時間を無駄にさせられてキレてた」みたいな全然締まらない台詞で終幕。
「第三の男」と同様、ジョセフ・コットンが理解のできない言語の飛び交うなかで奇妙な事件に巻き込まれていく。「第三の男」「市民ケーン」と同じくジョセフ・コットンとウェルズのペアが見られるのだが、アクの強いウェルズに振り回される役として「普通の人間」感が凄いジョセフ・コットンは適任なのかな。
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