ふき

アイアンマン2のふきのレビュー・感想・評価

アイアンマン2(2010年製作の映画)
4.0
軍事産業の社長が自ら作り出した兵器を葬るべく戦うヒーローアクション作品にして、マーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCU)の三作目。

本作は特に、トニー・スタークの周辺のキャラクターの魅力が大きい。
前作ではトニーの人生に間接的に影響を与えていた父親ハワード・スタークが、本作では直接的に大きな役割を果たしている。父の技術で窮地に陥ったトニーが、父の代では不可能だった技術で復活する繋げ方もおもしろいし、父に教えられたトニーの表情と台詞では泣いてしまった。スタークエキスポの挨拶フッテージで理想のハワードを出しておいて、あとでそのNG集を見せて人間味を演出するのもにくい。実はハワードとしては数えるほどしか出ていないのに、MCUでしっかり存在感を発揮するジョン・スラッテリー氏には拍手しかない。
ジャスティン・ハマーも大好きなキャラクターだ。トニー・スタークとロバート・ダウニー・Jr氏の重ね方のうまさに続いて、「トニー・スタークになれなかった男」としてのハマーを、「トニー・スターク役に選ばれなかった男」としてのサム・ロックウェル氏が演じるのがうまい。上流階級のように振る舞いながらも育ちの悪さが滲み出る演技で、本作では落ち込み気味なトニーに代わって多くの笑いを担っている。エキスポでのステップは白ける観客をよそに爆笑だし、トニーを本名の「アンソニー」と呼ぶ割りに全然仲良くなさそうなところもキュート。その上でしっかりヴィランもこなすのだから、ある意味本作で一番おいしいキャラだろう。
イワン・ヴァンコをあのミッキー・ロークが演じると知った時には「何故!?」と思ったが、現在の視点から振り返ると「一作限りのヴィランに豪華な俳優を当てる」というMCU作品の定石通りだ。粗末な環境からアークリアクターと武器を作り出す技術力と肉体性は、トニーのライバルとして説得力がありすぎるし、挑戦者としてモナコで戦うシークエンスはぶっちゃけクライマックスより上がった。敵地で別のことをしていると見せかけて、という部分も含めて一作目のトニーと重なる部分も多く、それだけに……。
また脇役もいいところだが、「Fuck you Mr Stark. Fuck you buddy」と笑顔で言う、ギャリー・シャンドリング氏演じるスターン議員が最高にチャーミング。ご冥福をお祈り致します。

ただ本作は、お話の出来はいいとは言えない。
本作のメインのお話は「アークリアクターで死につつあるトニー」であり「トニーが未来に何を残すか」であり、そこに「父親に認められなかったトニー」というサブのお話が絡んでくる。普通に考えれば、サブのお話を解決することで成長し、その成長でクライマックスを勝ち抜いてメインのお話を解決する、という展開になるのだが、本作はサブのお話の解決=メインのお話の解決という構造になっている。そのためクライマックスの前にメインのお話が解決してしまい、最後の戦いが消化試合になってしまっている。
ヴィランの扱いも問題だ。ヴィランがいくら「トニーも無敵ではない!」や「トニーの遺産を壊してやる!」と主張しても、肝心のトニーは自分の死や父親の件に集中していて反応しないのだ。ハワード・スタークとアントン・ヴァンコの因縁も、結局「コインの裏と表」というだけで片付けられてしまい、イワン・ヴァンコを産み出してしまったスターク家の責任の葛藤には繋がっていかない。だからヴィランはお話の中で空転したまま、「暴れているので倒しました」程度の扱いで終わってしまう。
上記に加えて、本作のメインヴィランは「Mark IVを強化したMark VIじゃなければ勝てなかった」という明確な描写がないので、見終わってみると「トニーが立ち直ったから敵に勝った」程度のお話と思えるのだ。これってつまらない話じゃない?

前作で人気だった要素を様々な形で再現しながら、キャラクターを増やしてスケールアップ、その上でのちのMCU作品を予感させるあれこれを入れ込んで、と辛い作りなので、上手くいっているところも多いが不満点も多い、際どい完成度の作品ではある。
同レベルの技術力を持つイワン、軍需産業経営者のハマー、アイアンマンスーツを使うローディ、同じアークリアクター開発者のハワードと、トニーにとって多方面のライバルが登場したのに、どう贔屓目に見ても語り切れたとは言えない。前述のように魅力的な配役が多いだけに、勿体なさ過ぎる。
だがしかし、Mark Vの格好良さに異論を唱える人はいないだろう。「予告映像で見せすぎだよ!」と思わなくもないが、イワンの強者感とあの衆人環視での変身を見せられたら、心に男の子を持つものとして興奮以外ない。スーツの壊れ具合もいい。ボロボロになりながらも戦うしかないサスペンスは、“アイアンマン”としての役割がある全員集合系では出せない魅力だ。
前半一時間は文句なしに面白いし、トータルでも見て損をする作品では決してない。是非見て欲しい。

……と言いたいところだけど、実は本作のトニーのお話って、のちのMCUシリーズに一切影響しないんだよね。ネタ振りは多いんだけど。「全作品見るのは大変だよ!」という方は、後回しにしちゃっても可。

(2015/11/22にマークしたが、見返した上で2017/01/24にアップデート)