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アイアンマン2のトルーパーcomのレビュー・感想・評価

アイアンマン2(2010年製作の映画)
4.0
新たに2人のヒーローが新登場するアイアンマンの続編。
エンドゲーム公開直前 MCU総復習その03。

一気に2人も新ヒーローが登場した本作は、シリーズが20作を超えた今振り返ってみると豪華な一作に感じられるが、反面、公開当時は「アイアンマンの続編」というよりは「アベンジャーズへのつなぎ作品」的な印象をもたれてしまった面はある。

第1作が大ヒットしたことで製作費も増え、セットや設定の豪華さは格段に増していて賑やか華やかな作品。
傑作とは呼ばれないかもしれないが、見ていて楽しい映画。


【1】2人のヴィラン
悪役としてミッキー・ローク、サム・ロックウェルが出演。
存在感あるミッキーと、薄っぺらいノリを出せるサムはタイプの違うキャラクターで魅力的。

個人的にはサム・ロックウェル演じるジャスティン・ハマーが大好き。
割と優秀なはずなのにトニーの方が一枚も二枚も上手で、どこか情けなくコミカルな感じに映ってしまうハマー。
トニーに勝てず、メンツを潰されてしまう彼が逆恨みすることになる様が、彼の演技によって絵で伝わるので対立構造に説得力が増す。

また、ハマーが情けない感じを全開に出してくれることで、メインヴィランであるミッキー演じるウィップラッシュの凄味や恐ろしさが増して見える効果もある。

前作のオバディアが、ただ金儲けしたいだけのあまり深みのないキャラクターだったのに対し、本作の2人はトニーに対する恨みや嫉妬の感情があるので悪役としてキャラが立っておりとてもよい。

ハマーが銃器を紹介し続けるシーンが本作のベストシーン。
いい俳優さんだと思う。



<以下、ネタバレあり感想>






【2】2人の新ヒーロー
本作から、後にアベンジャーズのメンバーとなる2人の新ヒーローが登場。

■ブラック・ウィドウ
スカーレット・ヨハンソンが演じ、まさにコミックから抜け出してきたような圧倒的ビジュアルのブラック・ウィドウ。
毎回髪型を変え、作品ごとに魅力が変わる彼女だが、撮影当時25歳の本作はやっぱり若い!
コミックでおなじみの黒スーツ姿になる前からあまりにもスタイルがよすぎるし、突如格闘術を見せるので最初っから只者じゃないことがバレバレなのは笑う。

この後長きにわたってアベンジャーズの中心メンバーとなる彼女だが、まだ観客も彼女の能力がよくわかっていない中、終盤のアクションシーンで一気にファンの心をつかんだのでは。
ハマー社に向かう車中で例のコスチュームに着替えるシーン(+ハッピーのリアクション含め)最高。
僕は本作でやられたので、今でもブラックウィドウはMCU好きなキャラトップ3に入ります。

よく、マーベル映画はDCより女性キャラが美人じゃないとかいう声を見るけれど、本作のスカヨハのビジュアルを100回見てから出直せと言いたい。

円盤のメイキング映像では自らワイヤーアクションに挑戦する姿がたくさん見られるので必見。
アクション映画を見慣れてくると背中側から撮り続けているカットなどで「あっ、ここは代役だな」って感じてしまうことが多くなるけれど、彼女はその美しい顔をしっかり見せながらカッコいいアクションを見せつける映像が多くてとても印象に残る。

『ゴースト・イン・ザ・シェル』のメイキング映像でも語られていたが、スカヨハは本当にプロ意識が高い女優さんで、困難な撮影にも積極的に挑戦する姿で現場スタッフらの評判がとても高いという話をよく見るので好感度高いし尊敬できる。
もちろん一部代役のスタントマンが演じるカットもあるけれど、ここぞっていう決めシーンをしっかり自分で演じてくれるとやはりスクリーン映えするよね。


■ウォーマシン
アイアンマンの良き相棒となるウォーマシン。
前作のテレンス・ハワードから俳優交代があったのが残念でたまらないが、それでもドン・チードル演じるローディはまたキャラがちがって魅力的。
破天荒なトニーに対し冷静で生真面目なローディっていうキャラの対比はなかなかよい。RDJのトニーというキャラを立てることが一番大事なMCUのアイアンマンシリーズにおいて、ローディを常識人キャラにしたのは正解なのかもしれない。

彼の登場シーンは背中から映しながら「ローズ中佐です!」
トニー「まさか君が来るとは」
ローディ「来たぞ。呼ばれたんだ。何も言うな。」
トニー「ただ...」
ローディ「黙れ」

ファブロー監督いわく、俳優が変わったことを観客にどう説明するか迷ったあげく、オープニングからギャグにして開き直ったとのこと。
これで全部許した。

ビームやミサイル中心にハイテクな武器で戦うアイアンマンに対し、
武骨な重火器で武装したウォーマシンのバトルシーンは迫力あってカッコいい。
ドローン軍を次々破壊していく場面の銃撃はテンション上がる。


【3】その他キャラクターについて
*ハッピー・ホーガン
ジョン・ファブロー監督自らが演じ、前作では顔見せ程度だったハッピー。今回はブラックウィドウやペッパーとからむけっこうおいしいシーンが多くて印象的。

*ペッパー
本作で社長に就任するも相変わらずトニーに振り回される様が可愛い。
トニーとのからみも楽しいが、本作ではナターシャと並んで歩くシーンがなんだかよい。エキスポ会場の階段を登る2人を後ろから撮ったショットがなんだか印象的だった。

ちなみに、ラストでトニーがペッパーを助けて着陸する建物はファブロー監督が生まれ育ったクイーンズのマンションの屋上らしい。
「僕はここの12階に住んでたから、この景色は僕が見て育った景色なんだ」って語ってて、そう言われるとなんだか特別な景色に思えてきた。
自分も実家がマンションなのでなんだかグッときました。


*ジャービス
ポール・ベタニー演じるAIのジャービスももちろん登場。
トニーが死に向かっていることを知っているのは彼だけなので、淡々とした話し方ながらどこか悲しげに聞こえる演技がよい。

*スターン議員
公聴会でのトニーとのやりとりが最高。エンディングでオチに使われているのとてもよかった。

*フューリー
初めて本編中にガッツリ登場。
声優さんが現在の竹中直人氏と違い、サミュエルジャクソンの声を担当することが多い手塚秀彰なので吹替版だと現在と印象違う。
ちなみにナターシャも別声優。佐古真弓さん。『ルーシー』のスカヨハも彼女だった。


【4】好きなシーン
*スタークエキスポ
開幕でトニーが到着するや踊りまくるアイアンマンガールたちにのっけから爆笑。最高。

*マーク5装着シーン
スーツケースからカチャカチャ装着するCGは歴代全スーツ装着シーンの中でもトップ3に入るカッコよさ。
ハイレベルなCGとカッコいいBGMで上がるシーン。
変身前後でハッピーが車で突っ込んでくるシーンの無茶苦茶さやパニックになるペッパーの可愛さ、変身が始まるや歓声をあげて駆け寄る観客たちなど、一連のテンポと流れも抜群。

*地獄へ道連れ
ローディがスーツを装着してトニーを叱って殴り合うシーン、Queenの『Another One Bites The Dust』が流れる。
2018年に大ヒットした『ボヘミアンラプソディ』でも死期の迫る主人公が堕落していくシーンで使われていた曲なので、今回ちょっと見え方が違った。

*ハマー
前述した武器紹介シーンはじめ、ハマーの登場シーンは全て最高。
エキスポ会場で謎ステップで登場し、すべりぎみのスピーチしたり、ノリノリでドローン紹介するトコBGM含め最高。敬礼で吹く。


【5】円盤特典ほか
ブルーレイの仕様が最高。監督の音声解説はもちろんのこと、「SHIELDのデータ情報」「プレビズやストーリーボード」など本編映像にポップアップを出しながら再生できるモードが素晴らしい。
ハマーが武器紹介するシーン、ポップアップで射程距離など武器の仕様データがブゥウウウーーンって出てくるので最高です。

5回も6回も繰り返し楽しく観ることができるように製作されていて、ファンサービスがすごい。
このシステムをスターウォーズはじめ大作映画は取り入れてほしい。ディズニーになってからは特典映像しょぼめなのであまり期待できないかな。

僕はAmazon限定のスチールブック版を買ったのですが、このverだと別途未公開シーンや撮影風景などの特別映像が1時間以上あるDiscもついてくるので、文句なしの仕様です。オススメ。


【減点ポイント】
■人間関係の弱さ
トニーの身に起こっている問題を、父親の残した映像を見て自己解決するっていう展開が物語の中心。
このため、トニーの身に起こっている物語に周囲のキャラクターがからんでこないので感情的にあまり上がらない。
・体の問題を自己解決するトニー
・彼に逆恨みする悪役2人
・社長業に忙殺されるペッパー
・危機に対し焦るローディ
・トニーを見張るシールド
すべてがそれぞれバラバラに動いているので結果として物語もバラバラに動いていってしまっている。
アイアンマン1と3は、トニーの問題に周囲の人物がきちんと関わっていくので素晴らしい映画と感じられましたが、2はそこが弱かったと思います。

■他
リアクターのせいで命の危機を迎えているトニーが父のヒントで問題解決するっていう大枠はいいと思うんだけれど、「新元素が誕生しました」が意味わからなすぎて観客は置いてけぼりになってしまう。どういう理屈かさっぱりわからない。わかる必要もないってことなのか。

ドローン軍とのチェイスはよかったけどウィップラッシュ自身とのラストバトルが残念。ミッキーロークの顔だけ出てる映像が合成感強すぎて違和感。決着までの尺が短すぎて盛り上がらなかった。
まあ別れた妻のくだりだけ面白かったけど。

MCU作品はエンドロール前半でカッコいい映像が入ることがほとんどなのに、本作はそれがなくて残念。


【スコア】
★4.0で。
ところどころ派手で楽しいシーン満載なので楽しいですが、1本の映画の作りとしては散漫な印象。
★3.0でいいかなと思いましたがハマーとナターシャのキャラが大好きなので+0.5ずつして4.0にしました。


<以下、MCU全作観賞済みの方向けネタバレあり感想>






【6】MCU小ネタ/オマージュについて
・トニーの体の異変を唯一知っているジャービスとの会話、AIの彼が後にヴィジョンになるんだって考えながら見ていると感慨深い。

・コールソンが異動になった新任務地のニューメキシコは『マイティ・ソー』につながってる→エンドロール映像

・コールソンがキャプテンの盾の模型もってくるの「あっ!」てなる。

・トニーがプリズム加速器を作ってるシーン、円盤の特典映像でデータポップアップ出すと「PROJECT:P.E.G.A.S.U.S.」って書いてある。
 作業を開始する前夜、トニーが見ていたハワードのメモに四次元キューブのイラストがあるので、トニーは四次元キューブを動かしている仕組みを参考にしたということか?だからプロジェクト:ペガサスということ。キャプテンマーベル見た後だと「おっ!」って思うポイント。

・エンディングで「アベンジャーズ計画」のファイルが登場。これもキャプマ観賞後だとニヤッとする。

・本作のラストでトニーが相談役に就任し、背後でハルクが大学に登場したニュースが流れているので、時系列としては
 アイアンマン1→インクレディブルハルク序盤→アイアンマン2→インクレディブルハルク後半だということがわかる。
 また、ここのフューリーと話しているシーンで後ろのモニターに映っている世界地図に印がついているの、キャプテンアメリカ/ソー/ハルク/ブラックパンサー、の調査をしている地域らしい。たしかにアフリカにも印がついてた。
 2010年時点でもうブラパンのネタ入れ込んでいるのに驚き。

・スターン議員、後にウィンターソルジャーで再登場して驚く。クソ野郎であることが伏線になっているのでよい。

・エキスポ会場にいた、アイアンマンのお面をかぶった少年は後のスパイダーマン、ピーター・パーカーであるという設定が後付けされた。
 エキスポ会場のすぐ外のシーンは実際にNYのクイーンズでロケしたらしいので、理由のある後付けになっている。
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