netfilms

勝手にしやがれ!! 成金計画のnetfilmsのレビュー・感想・評価

4.2
 風に揺れる風鈴、シリーズ1,2の部屋にまた引っ越し、部屋の前にカウチを出してうたた寝する雄次(哀川翔)の元に、耕作(前田耕陽)の威勢の良い声が響く。雄次がチャリンコに乗り、耕作はその後を駆け足で追うが、やがて疲れた耕作は雄次の自転車の背に乗る。とあるビルの駐車場、チンピラがドアを開けた瞬間、至近距離で撃たれ倒れる。ビルの立体駐車場で突如仲間割れした彼らは壮絶な撃ち合いの末に全員が絶命する。そこに通りがかったこのビルに勤めるOLの三奈子(鈴木早智子)は転がる死体に悲鳴を上げる。網と虫かごを持って、フクロウの捜索をしていた雄次と耕作の真裏、すんでのところでゴミ袋の山に三奈子が乗った車が突っ込む。大丈夫ですと気丈に答えた車はその後蛇行運転を繰り返し、数100m進んだところで止まっているところを雄次と耕作に介抱される。数日後、バッグを忘れて雄次の部屋に戻った三奈子は、暴力団抗争の現場にたまたま居合わせてヘロインを託されたと告げる。すでに組員は全滅しており、彼女が手にしたヘロインの包みは時価800万相当。処理を任されたふたりの元にはどこで聞きつけたか暴力団の3人組や麻薬バイヤーが現われ、てんやわんやの買取競争を繰り広げる。だが三奈子は実はまだ包みが隠してあると言い出し、こちらの紙袋ひとつぶんの時価は10袋で8000万相当だった。

 哀川翔と前田耕陽の凸凹コンビの珍道中を描いたVシネマ『勝手にしやがれ!!』シリーズ第五弾。雄次は住み慣れた部屋に再び舞い戻るが、2人の関係性は変わらない。両者全滅となる苛烈な撃ち合いの現場に、偶然居合わせたOL三奈子。そこで最後に生き残った諏訪太朗から大量のヘロインを受け取り、彼女は逃げる。ひょんなことから、ヒロインの三奈子が800万円相当のヘロインを2人の元に運び込むが、それは鮮やかに増殖の一途を辿る。最初はバッグの中に入っていた一つの袋だった時価800万円相当のヘロインが10個になり、やがてヒロインと不倫中の上司・岡山(塩野谷正幸)が隠し持っていた袋の山が見つかり、三奈子は一切を白状することに。5作目となった今作では雄次と耕作の掛け合いも見事だが、それ以上に首輪を付けられた暴力団の舎弟と組長に電話で何度も呼び出しを受ける男、どこからともなく匂いを嗅ぎつけてきた麻薬バイヤーの男らがオフビートなコメディを繰り広げる。 スクリーン・プロセスによりダンボールの山の中で運転する4人の姿の痛快な遊戯性。クライマックスの遊覧船の場面の面白さは、捨てたはずのヘロインが河岸に落ちていることでも明らかにされる。用意周到であるがゆえに、心底出鱈目なピタゴラスイッチ、それを仰ぎ見る4人並んだ後ろ姿、夕陽を浴びて、バレーボールをする4人の刹那、雄次と耕作の一張羅の白と赤のスーツが来たるべき最期の瞬間を予感させる。
netfilms

netfilms