シネマの流星

息もできないのシネマの流星のレビュー・感想・評価

息もできない(2008年製作の映画)
5.0
粗暴な日常を繊細に描く。映画は究極の人語り。暴力が暴力を肯定し、暴力を否定する。

暴力がメリーゴーラウンドのように周り、傷と傷が触れあい、ミルフィーユのように重なることで柔らかな感情が生まれる。

罵ることでしか、汚い言葉でしか想いを伝えられない。それも人間。言葉を超えた語彙力。

暴力を描くのではなく、暴力を振るう人間を描き、暴力を振るう側の傷を描く。

俳優がカメラのフレーム内に閉じこもっておらず、カメラが俳優を追いかけている。

多用されるクローズアップは心の奥の悲しみを、魂の輝きを捉えようとしているから。

すべての傷に、血に体温があるから、『息もできない』は観客を包む。
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