ずっとずっと気になっていたのに、自分の中でタイミングが来なくて2008年の公開から随分と時間が経ってしまった。公開時から絶賛の嵐。オススメの映画のタイトルによく上がっていた「息もできない」。なんて骨太な映画。
暴力を見て育ち暴力で多くのものを失ったのに、暴力でしか人と関わることができない。すぐに手をあげるのに、実は家族思いの優しい人。サンフン。
営んでいた屋台をめちゃくちゃにされて止めに入った母親はヤクザに連れ去られて死んだ。うんざりする父親の世話をしながら勝気に生きる女子高生。ヨニ。
二人は大切な時に、時間を共有する。自分の人生が恨めしくて、苦しくて、息がつまる。何も言わずに泣くことしかできない。だけど、二人でいる時だけ泣けたんだ。
ラストが凄いなぁ。ちゃんと描いている、暴力の先に何もないってこと。仕出かしたことは自分に返ってくる。そのことを誤魔化さずちゃんと描いている。
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ヤン・イクチュン。なぜこの脚本を書いて、撮ろうと思ったんだろう。サンフンを演じる中で吐き出した想い。製作資金がなくなって家を売り払ってまで撮り続けた情熱。きっと、あるんだろうな家族とのごまかせない出来事が。だからこんなにも多くの人の中に入って離れないんだろうな。
フィクションだからこそ、その隙間に真実があってその事から目が離せない。苦しい。
全然関係ないけど、西原理恵子さんが著書に「貧しさは暴力になって弱いものに向かう」って書いていて、なんだか妙にその言葉を思い出す。