やま

息もできないのやまのレビュー・感想・評価

息もできない(2008年製作の映画)
4.1
面白い。
これほどまで、登場人物のキャラ設定を分かりやすくセリフやシーンで見せる映画見たことあるっけな。だから終盤の彼のシーンで、息ができなくなるんだろうな。彼がどういう人間であるのか分かるから。

それと同時に、彼女の背景もわかりやすい。母親が死んだ事実を忘れ未だに、生きていて他の男に股を開いてるとボケてしまってる父親、荒ぶる兄の存在。どうしようもない家庭の中、彼女が一家の中心として切り盛りしている。彼女のそんな苦労している状況を理解してくれる人はいない。

そんな彼と彼女のファーストコンタクト。え?こんなやばそうなやつに連絡先渡して、更に脅したりもするもんだから、とても違和感を覚えた。けど母親も悪い奴らに立ち向かってく存在であったから、そういう遺伝なのかなと解釈。
お互いの事情を語り合うことなく、二人は一人の少年を挟んで仲を深めて行く。いつしか二人は語ることなく自分たちを理解し合う存在になっていく。

そんな彼らの最後が悲惨すぎる。ロングショットで横たわる彼の姿には、更に息がつまらされる。そして彼の状況を知らずに、彼の甥である少年の学芸会。このカットバックがたまらなく辛い。

映像のチープさも、また面白い。おそらく手持ちカメラで撮影したと思われる。ブレ具合。ズームによるブレで、三人が仲良くしている状況を客観的に僕らに分かりやすくみせてくれる。暴力シーンでのブレ具合も個人的に好みだった。
このブレがこの映画の荒波のような状況を示しているようにも思えるシーンもあった。

どんな父親であろうが、結局は父親である。その事実を受け入れるしかない。韓国の貧困地域の家庭模様を多く映し出した映像も韓国の状況を示しているようで興味深い。


殴る奴は、いつか殴られることを知らないと言った主人公には、分かりきっていた結末なのかもしれない。
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