YukiSano

息もできないのYukiSanoのレビュー・感想・評価

息もできない(2008年製作の映画)
3.8
毒舌満載映画。なのに出てくる人物に共感し、同情し、愛しく思えてくる。

最悪な暴力と罵詈雑言しか吐かない主人公と、気が強過ぎる女子高生が心を通わせていく様子はとてもベタベタなのだが、その愚直さが心に刺さってくる。

完全自主映画のため、21世紀が舞台とは思えない木訥さと雑さが、かえってデジタル時代には衝撃がある。

普遍的な暴力の連鎖と運命の皮肉を描いているのだが、全ての人間関係を主人公たちは理解しておらず観客だけが知っているという状態が不安も愛情もない交ぜにしてくる。

凄く狭い人間関係で世界の縮図を描いていてヤン・イクチュンの才能の凄さは伝わるが、これ以降で監督作はない。それはやはり、この作品のナイフのような鋭さと裸で荒野を彷徨っているような感覚が商業に向いていないからだろうか。

時代に逆行しまくった純度の高い孤高の映画だったと思います。
YukiSano

YukiSano