セリフで語らずシーンで魅せる。
『息もできない』
ヤン・イクチュンが監督・脚本・主演を務めるこの映画。ハンドカメラを採用しており、かなりリアルっぽい演出が多かった。
物語、冒頭から暴力の嵐。映画の初めから視聴者に強烈なインパクトを与えると同時に「なんでこの人はこんなに暴力を振るうのだろう?」と疑問を抱かせる。次第にわかっていく主人公の背景や過去を明かしていくペースは丁度良かったように感じた。
ヒロインであるヨニもかなりいい。ヨニも厳しい境遇だったり、悩みを抱えており拠り所となるのがサンフンだった。言葉では表現をするのが下手で、すぐに手が出てしまうサンフンとヨニのやり取りは観ていて、すごく興味深かったし、映画全体暴力で溢れている映画だったからか、そのシーンは観ていて心地よかった。特に河川で膝枕するシーンなんてベストシーンに入るくらい好きだ。
ラストの方について(ネタバレ)
若干、長いなと感じたのが正直なところ。それでもやはり、後半の怒涛の展開は引き込まれる。印象に残っていたセリフ「他人を殴るものは自分が殴られるとは思っていない」は最後のシーンに通じており予想できる展開ではあったがやはり心打たれる。
「父親」「不条理」「韓国社会の闇」など様々なテーマが内在していたこの映画だったが、どれかが一番目立っているというわけではなくバランスがいい。クライムというよりはヒューマンドラマとしての傑作だと感じた。