タスマニア

息もできないのタスマニアのレビュー・感想・評価

息もできない(2008年製作の映画)
3.5
2020年200本目。

これが、韓国映画の話題にたまに上がる「息もできない」か。
これがヤン・イクチュン映画か。
そして、この人がヤン・イクチュンか。
彼のフィルモグラフィを見たら結構日本の映画とかもあって、興味深い監督だな。日韓の境界を超える監督。

それにしても、悲しい映画だなぁ。
物語の流れや着地点を考えたときにサンフンに待ち受ける結果はあれしかなかったとは思う。
因果応報はいつだって人が変わり始めるときに突然くるものだったりする。
気づいたときにはいつも遅い。
社会的弱者がより弱者を痛めつける貧困の連鎖構造は韓国映画でよく描かれるものなのかな。
多分この映画は貧困とかはテーマではないんだろうけど、ちょっと気になった。
全然関係ないけどサンフンの顔はボクシングの元世界チャンピオンの内山高志に似てるなって思った笑
内山さんは結構にこやかに笑うけど、にこやかさをなくした感じ。
ダイナミックな暴力シーンより、サンフンが繰り返し子分達にビンタをかます小さな暴力の方が、シーンとしての暴力表現としてはちょっと嫌だったな。
なんか、これまでの育ってきた環境によってその所作が染み付いてしまったような感じ。
それこそ、映画の中で「これでもか」というぐらいに聞こえてくる「シバラマ」という言葉のよう。
自分のこれまでの経験や環境でどこか腐ってしまって、家族に対して社会に対して「くそったれ」という感情をぶつけ続けているよう。

そんな中でも社長とヨニへの「シバラマ」はちょっとだけ温度感が違うのかもしれない。
社長いいキャラクターだったな。すごく。
サンフンとはどう言う関係なんだろう。まぁいいか。

あと、ヨニいい子だったなぁ。すごく。
強くていい子だった。
恐ろしく最悪な出会いからあんなに信頼し合えるのはシンパシーなのかな。
恋愛感情というよりも、友愛なのか。
二人は互いに干渉しすぎず、必要なときに拠り所になる、そんな共生の関係かな。
漢江で膝枕をして二人して泣くシーンなんてまさにそれを感じた。
ヨニの泣き方が強い女の子のそれで、なんかグッとくるんだよな。
変わり果てた姿のサンフンと再開したときのヨニの涙のシーンなんかも。

ヨニが素敵すぎて女優さんが誰か調べてキム・コッピを知る。
そして、キム・コッピが「君が君で君だ」のソンだったことに衝撃を受ける。
一気に気になる女優さんに躍り出た。笑顔と涙が素敵。
最近の韓国の俳優をちゃんと意識して認識し始めたので
今ならば「好きな俳優はソル・ギョングとぺ・ドゥナ」「最近気になる俳優はキム・コッピ」と答えられる。
どんどん増やしていきたい。

最後に社長の焼肉店に皆が集まる幸せの光景に、最も悲しいシーンをフラッシュバックさせる構成はズルイね。
「これぞ韓国映画の泣き」と言えるような号泣シーンだった。
あと地味に、サンフンの姉とヨニが店の外で手を取り合って別れるシーンが素敵。
サンフン亡き今は、ヨニと彼女、引いてはヒョンインを繋ぐものは絆でしかない。そんな繋がりがちゃんと残ったことが素敵。
その後にやるせない事実がわかるとしても。

「息ができない」ってインパクトがあって、なんかしっくりくるタイトルのような気もするけど
考え方によっては他の映画にも簡単に当てはまってしまう。
「息もできない」と訳した人に真意を聞きたい笑
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