Jimmy

夕凪の街 桜の国のJimmyのレビュー・感想・評価

夕凪の街 桜の国(2007年製作の映画)
4.5
広島の被爆者とその末裔たちに影を落とす戦争の傷跡を女性3代にわたって描いた感動的な作品だった。映画を観て、こんなに泣けたのは、久しぶり。

「昭和33年 夏」のテロップから始まり、戦後女性を麻生久美子が好演。この昭和33年の頃の映像は『ややセピアがかったカラー』とし、オート三輪・七輪・井戸のポンプ・ちゃぶ台・物干しざお・道端のゴミ箱・はたきなどの小物も時代を反映した映像作りの意気込みが感じられた。
そして、麻生久美子が更に思い出す場面は『更に白黒に近いカラー色』、現代で田中麗奈の映像は『鮮明なカラー色』と、映像カラーの使い分けが上手い作品である。

時折、挿入される原爆の絵が迫力あり。

麻生久美子が「13年前、ウチは5人家族だったんです」から始まる告白場面、「うちはこの世におってええんかね」に対して、男は「生きとってくれて、ありがとう」のセリフは胸を打つ。感動的である。
麻生久美子の「原爆は落ちたんではなく、落とされたんじゃ」も痛烈。
「夕凪が何度終わっても、この話は終わりません」と、原爆の被害は現代にもつながる想いを伝えるセリフ。
現代の田中麗奈が過去の家族風景を見た直後の呟きも、原爆被害は現在も続いていることを表現している。
田中麗奈が麻生久美子の写真(会社で撮影)を見る場面も、あの何気ない写真一枚が「こんなに重みを持つなんて」と思うと、心に響く。

佐々部清監督の手腕と映像処理も素晴らしいが、歴代の家族を演じた藤村志保→麻生久美子→田中麗奈、そしてその友人役の中越典子、素晴らしい女優陣による連携も見事であった。

傑作である。
Jimmy

Jimmy