青山

そして人生はつづくの青山のレビュー・感想・評価

そして人生はつづく(1992年製作の映画)
3.8

1990年に起きたイラン地震の際、キアロスタミ監督は息子とともに『友達のうちはどこ?』の出演者の少年の安否を訪ねて被災地へ向かいます。
本作は、その体験をドキュメンタリータッチで描いた映画で、偶発的な""ジグザグ道3部作""の2作目に当たります。

前作を作中作として取り込みつつ、本作自体もまた映画であることを明かした実験的な作品でした。
話の流れとしては、前作の主演の子供を探しながら被災地の人たちにインタビューしていくというものですが、会いたい人になかなか会えずに人に道を聴きながら彷徨するところ、それに宿る一種のサスペンス性なんかは前作の再演の感もあって面白いです。
インタビューに答える村人たちの話は悲嘆ばかりでもなく、それでも人生が続いていくという淡々とした前向きさもあってリアルに感じました。でもこういう話も全部脚本なのではという引っかかりもあってなんとも掴み所がない映画でしたね......。

しかし、ドキュメンタリーという形式をとったにせよ、映画として写すものと写さないものを取捨選択して編集していけばどこかしらで必ず恣意的な部分は出てくるはずで、それならば予め虚構宣言をしたことが震災というテーマを語る上でのひとつの誠実さにはなるのではないかと思います。

あまりにも美しいラストシーンがその作り物としての誠実さを体現しているようで印象的でした。そして、人生は続くのですね......。
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