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ニューヨークの怪人のhorahukiのレビュー・感想・評価

ニューヨークの怪人(1958年製作の映画)
3.0
目からビームを連射して食糧危機を解決しようとするフランケンシュタイン系SFホラー。

タイトルに『ニューヨークの』ってついてますが、『恋人』でも『幻』でもなく『怪人』です。ジャケ画像の怪しいオッサン(怪人)が息子と交流しながら、こじんまりとささやかに、かつ申し訳程度に暴れるお話です。

あらすじ…
世界的食糧危機の解決策について研究している若手有能研究者が交通事故で死んでしまった。それを世界的な大損失だと考えた父親が脳だけを取り出し保存。その父親が、ロボット研究の第一人者であり死んだ研究者の兄でもある息子と2人でサイボーグとして蘇らせようとするが…。

脳だけを取り出して保存するっていう発想は、様々な作品で取り入れられてるアイデアだと思いますが、本作の面白いところは脳と肉体の不可分性を描いているところ。脳は当然意思や感情を司る器官なわけですが、肉体がない状態で単独で存在するウチに次第に人間らしい感情が希薄になっていくというのが当時として結構斬新なんじゃないですかね。

復活させた目的が食糧危機解決に向けた研究をさせるためなんですけど、ジャケにもあるようになぜか目からビームが出ます(笑)ちなみに頭部含めて体を作ったのは兄。もともとサイボーグとして復活させることに否定的で父親の命令で嫌々手伝ってたんです。「弟の脳でロボット作るなんて間違ってる!」とか言ってたのに目からビーム出せるように設計しちゃうとか、完全に遊んどるやん!ノリノリやんけ!

ロボットが動く時にバチバチバチっていう電気がショートしてるような音が大音量で必ず鳴り響くんですけど、これが結構好きでした。ロボットは特に問題なく動くし、動力的な問題は作中で指摘されないから極めて正常な状態のはず。だけど、このショート音が今にも壊れてしまいそうなロボットの脆弱性を観客に伝えてくる。人間の脳+機械の体という本来なら馴染むはずのない、もっと言えば存在してはならないものだという「存在自体の歪さ」がショート音によって表現されてるわけです。意図してんのかわかんないけど、この演出はかなり好き。

死んだ父親とは露知らず、ロボットと交流する息子の無邪気さと真実を打ち明けられないロボとーちゃんの思いには泣けてくるし、美人な弟嫁を弟の死に乗じて早速寝取ろうとする兄のクズっぷりにも泣けてきます。やっぱりノリノリやん、この兄!

そんな感じでアホなポンコツSF作品で、笑いながら見れて面白かったです。ちなみに9月7日からレンタル開始してるので、気になった方は是非♫
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