似太郎

ロリータの似太郎のレビュー・感想・評価

ロリータ(1962年製作の映画)
5.0
はっきり言ってキューブリック作品の中では『シャイニング』の数倍は怖いホラー映画である。ジャンル的にはちっともホラー映画ではないけれど。🙄❓

モノクロ映像による画面構成がホラーっぽいのか知らないが、終始幽玄なムードが漂っているのが特徴。冒頭で予め主人公の破滅を予感させる演出効果が素晴らしい。ある意味オーソン・ウェルズの『市民ケーン』的な手法かも。

たしかにナボコフによる原作小説の信奉者からしたら不満が残る出来かも知れない。脚本はナボコフ自身が手掛けているが、やはり脚本による力は大きい。どうもキューブリックの映画なのかナボコフの映画なのかどっち付かずな印象は否めない。尺が異様に長いのは明らかに脚本家(ナボコフ)の責任だと思うが…。

主演のジェームズ・メイスンが腐臭漂うロリコン作家を熱演しており、役柄とフィットしている辺りはさすが。ロリータ役のスー・リオンも巷で言われる程ブスではなく、結構可愛いと思う。むしろネチネチした悪役ピーター・セラーズの方が圧巻。『博士の異常な愛情』に負けず劣らずのキ○ガイ紳士ぶり。彼の演技の迫真度には舌を巻く。

ゴシックかつヨーロピアンな意匠を纏ったフィルムノワールとも取れる内容で、当時流行っていた実存主義文学へのアンチテーゼという気もする。そこら辺はナボコフの原作のテイストに忠実である。

まだキューブリックらしさはそこまで感じられないが、『突撃』『スパルタカス』以降どんどんブラック・ユーモア的な作風にチェンジする記念碑的な映画でもある。出てくる男が(主人公を含め)全員気持ち悪いので、女性は引くと思うけどキューブリックらしい流麗なカメラワークや風景ショットなどはこの頃から凄まじいセンス。

個人的には最もしっくりくるキューブリック作品で、彼のベストだと思う。誰も賛同しないと思うけど…。😂🔨💥
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