紅孔雀

ジュリアの紅孔雀のレビュー・感想・評価

ジュリア(1977年製作の映画)
3.9
昔々劇場で観た時は、(反ナチ活動といったシーンはあるものの)さほど劇的な話でもなく、原作者リリアン・ヘルマンの、幼馴染みジュリアへの友情(憧れ?)を描いた回想録といった印象でした。ところが、本作を観た女性方は結構思い入れが強く、“女性特有の同性への微妙な気持ちを描いてくれた”と高評価なんですね(ここらの事情は、みおこしさんの見事なレビューをご参照下さい)。
私的にはリリアンの旦那さんことダシール・ハメットに関心があり、赤狩りにあった夫婦の裏話の方が面白かった覚えがあります。
いずれにせよ、名匠フレッド・ジンネマンの演出も手堅く、珍しい女性同士の友情を描いた作品として記憶に残る文芸作品でした。
PS: ところがリリアンには虚言癖があり、ジュリアなんて実際は存在しなかった、という説もあるとか。ただ原題「ペンティメント」は、絵画で重ね塗りされて見えなくなった元の画像が透けて見えるようになることを意味し、いかにも記憶の底からジュリアの肖像が浮かび上がる感じです。こんな意味深な題名を持った作品が、まるで虚構とも思えません。些かでも真実が含まれていたと思いたいところです。
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