Ricola

女の園のRicolaのレビュー・感想・評価

女の園(1954年製作の映画)
3.8
全寮制の女子大学を舞台に、「自由」の奪われた学生たちと学校の対立が描かれる。
しかしそれは単純な二項対立的な対決ではなく、日本の根強い封建主義体制への批判が根底にある。


先生たちはさまざまな場面で学生たちに、「規律」や「道徳」を厳しく説く。
それに学生たちが異議を唱えるも、「規則は規則だから」と融通のきかない答えしか返ってこない。
このような抑圧に対して学生たちは、「精神病院よここは」「牢獄よ自由を閉じ込めちゃってる」
と陰で不満をもらすことしかできない。

高峰三枝子演じる五條先生はラスボス的存在で、ルールに厳しく冷酷である。
その厳格さは、学外の学生の生活にまで口出しをするほどの徹底ぶりである。
最初の登場では、穏やかだが厳しい物言いの五條先生にカメラが近くと、彼女の鋭く冷たい眼差しが捉えられる。

先生や学生同士のやり取りにおいて、彼女たちの本音を切り取るのはカメラである。絶妙なショットのタイミング、距離感などで彼女たちがはっとした瞬間を表している。

例えば、明子(久我美子)と五條先生が会話する際には、お互いに戦闘体勢をとっているシーン。
その体勢とは、穏やかで上品な口調を保っているけれど、ズケズケと相手を刺すような言葉を投げつけているということである。
この「バトルシーン」に関して、基本的にはロングショットもしくはミディアムショットで捉えられるが、それぞれ痛いところをついたりつかれたり、相手に揺さぶりをかけるときにはクロースショットで横顔もしくは正面の顔が映される。
その際の厳しい表情に背筋が凍るようなゾワゾワした感覚を覚える。

富子(岸恵子)の抵抗に微笑む明子と敏子に、それぞれカメラがズームする。
彼女たちの団結力および絆が深まる瞬間であることが、彼女たちがアイコンタクトしていることを示すこのショットの連続から察しがつくだろう。

さらにはこの学校の奇妙さ、閉塞感はショット構成にも表されている。
外の景色がよく見える窓のショットに、芳江(高峰秀子)がフレームインして廊下の窓の前にある障子を閉めることで、唯一の逃げ道の象徴のような窓さえも封じられる。
さらには学校内から外の門が映るショットでは、トンネルから見通す形で門が遠くに見える。トンネルによる大きな黒い影の奥に、門および外の世界が小さく奥に見える。
この学園からしたら、外の世界というのは遠い場所であり全くの別世界なのだ。

「人権と学問に自由を!」
学生はもちろんだが、それは教師やいち学校だけでどうにかできる問題ではない。
この国自体の体質的な問題であり、この問題は現代でも解決済みとは言い切れないだろう。
Ricola

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