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地下水道のslowのレビュー・感想・評価

地下水道(1956年製作の映画)
4.5
強国の駆け引きに翻弄された末、ドイツ軍に占領された旧市街。力の差にワルシャワ蜂起部隊の敗北も迫り、なす術のない中隊員達。止むことのない攻撃に、彼らはプライドすら捨て地下水道を使い本体との合流を目指すのだが…

暗く狭い、ポーランド人が抱えた絶望そのもののような地下水道。見えていたものへの恐れ。見えないものへの怯え。いつしか行き着く場所も定かではなくなり、死神に鼓動を支配され、不安定な心地で闇を彷徨う。ある者は精神を病み、ある者は冷静な判断を欠いてしまう。そして、ようやくその目に射し込んだ光が、隊員達に見せたものとは。

汚水から発生した有毒ガスなのか、ドイツ軍が仕掛けた毒ガスなのかわからず場が騒然とし発狂する様。人の命にまで気の回らなくなり、自衛に走る様。極限状態で人は壊れずどこまで自我を保てるのか。そのバランスがとてもリアルに感じられ恐ろしかった。
前半で見せた緊張感のない隊員達の姿。何故このようなシーンが撮られたかということにも注目したい映画である。
隊長の最期の行動。一見すると地味だが、時間が経ってもそれはまだ胸に突き刺さったまま、何かを訴え問いかけている。
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