やくざ映画専門名画座だった新宿昭和館で最多上映された作品。牧口雄二監督唯一の東映ヤクザ路線。「仁義なき戦い未来編」という方向性で制作された異色の一本。
昭和43年、広島。巨大組織・関東同志会の広島進出を阻むため、県下の暴力団、津島組、大西組、酒木組が結束しこれを撃退した。事件で殺人を犯した大西組幹部・神野(松方弘樹)は、義兄弟の津島組幹部・北条(小林旭)の妹の涼子(中島ゆたか)と結婚したばかりで八年の刑に服した。その後、津島組と酒木組の間で抗争が勃発、解散に追い込まれた酒木組の幹部・沖本(室田日出男)は広島を“所払い”になる。やがて津島組が中心になり県下の暴力団が大同団結し神和連合会が発足、北条が二代目会長の座に就く。昭和51年、出所してきた神野を北条は幹部として迎え入れるが、神野は待ち続けていてくれた涼子のために堅気になると宣言。東京にいる沖本に誘われて総会屋の仕事を始めるのだが。。。
熊野旅の疲れで頭が働かないためシンプルな娯楽を期待して鑑賞。原爆ドームを映し出すオープニングや“総会屋”の要素は社会派系の内容を期待させたが、シナリオが大雑把なため主役・神野の気持ちの変化が常に刹那的にしか見えずあまり盛り上がらなかった。最も丁寧に描写されていたのは最初から最後まで不幸な涼子。ヤクザな夫の出所を待つアパートでの一人暮らし。美容師の仕事から帰宅し夕食のおかずはコロッケひとつ。終盤、幸せそうな新婚花嫁の髪をセットする涼子の無表情に監督の思い入れを感じた。牧口監督のエログロ路線と同様に最低男と被虐のヒロインの構図なので、結果的にヤクザ=最低として描かれているため盛り上がらないのは必然と言える。なお題名にある“人質奪回作戦”のプロットは無かった。