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階段通りの人々のsonozyのレビュー・感想・評価

階段通りの人々(1994年製作の映画)
4.0
ポルトガルのマノエル・ド・オリヴェイラ監督 85歳頃の作品。
原題『A Caixa』は「箱」の意味。
リスボンのとある階段通りを舞台に、一人の盲人の「施し箱(通行人がコインを入れてあげる箱)」を巡る悲哀溢れる物語。

階段の上には教会や劇場があり、下には賑わう通りがある、さほど距離のない階段通り。
朝からいきなり道の真ん中で服着たまま立ちションしちゃうオバちゃん登場に驚きますが、こういう場所なのねという下地が出来ます。笑

朝の通勤通学時間だけは大量の人が行き交うが(『剣の舞』が流れるこのシーンが面白い)、それ以外は住人やその知人くらいしかやってこない。

家の前に座る盲人の男は、靴ひもなど小物を並べ、施し箱を置いて座っている。
その娘は、無職のしょーもない夫がいて、終日洗濯やアイロン掛け仕事や家事でいつもヒステリック状態。娘も夫もその父に暴言やどついたり酷い仕打ち。

日々の暮らしもままならない近所のおばちゃんや、娘の夫の友人たちが、盲人の周囲にいつもたむろしていて、その施し箱を羨ましがり、いくら入ってる?いくら稼いだ?俺もその箱が欲しい..と、箱をネタに盛り上がっている。

この施し箱をめぐる騒動から悲劇へ・・・

飲んだくれてふらついてる夜警帰りの男。
文無しで一緒に暮らす靴磨きしてる孫に当たり散らし、小銭を恵んでもらったりしてる立ちションオバちゃん。
赤子を抱えた妊婦。
朝から開けてる小さなバーの店主。
バーの前に座り豆を売る女。
バーでギターを爪弾く紳士。
バーの常連は、松葉杖の男や、盲人の娘の夫の知り合いの3人のゴロツキ。
赤いボディコン姿で登場する美しい娼婦。
その娼婦にからみつつカメラ目線で「いい女だろ?」的にアピる男。
ニセの盲人男と介助する少年。
階段の絵を描く女と、それを褒めてるアメリカからの観光客女性2人。
・・階段通りの人々の人物描写がいい。

夜のブルーのライトの中、踊る金色衣装のダンサー少女たち。
焼き栗の煙モクモク。
ギター弾きの「アベマリア♪」が沁みる。

※施し箱の「ABLB」という文字が気になり調べると、”ルイ・ブライユ慈善協会公式”という意味らしく、偽物ではないという証のようですね。

英語字幕
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