Jeffrey

階段通りの人々のJeffreyのレビュー・感想・評価

階段通りの人々(1994年製作の映画)
3.5
「階段通りの人々」

冒頭、ここはリスボンの下町。 夜明けの薄明の中、夜警が階段を上る。貧しい人々、12番街の老女 、朝のラッシュ、居酒屋、盗難、靴磨きの少年と仲間。今、恵の箱をめぐる人々の物語が始まる…本作はマノエル・デ・オリヴェイラが1994年にポルトガルとフランスで監督した作品で、この度DVDにて初鑑賞したが面白い。まずテーマとしては下町に生きる人々のどん底の悲劇を喜劇として描いているところである。盲目の老人が手に入れた通行人からお金を集める恵の箱をめぐるストーリーで、情緒豊かな舞台を背景に展開される分、個人的には非常に好きな作風である。またドキュメンタリーらしさも有り、音楽も素晴らしかった。役者のシュールな芝居も良い。

彼の作品て上映時間が長くてかつ難解で退屈な映画がある中、この群像劇は良かった。上映時間も短いし、登場人物が少し多く感じるが分かりやすい脚本でもある。靴磨きの少年が誰かに似ているなぁと思っていたのだが、特に誰でもなかった。前作の「アブラハム渓谷」でおなじみの顔ぶれぞろいなのも親しみやすくて良かった。さて、物語はリスボンの階段通りに生きる下町の人々にはうらやましい、盲目の老人の持つ恵みの箱。だがその箱がふとした隙に盗まれた時、人々の運命は転がり始める…と超簡潔に説明するとこんな感じで、最高齢でありながら素晴らしい作品を撮っている世界的な巨匠の90年代の秀作の1本だ。
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