p99

ディパーテッドのp99のレビュー・感想・評価

ディパーテッド(2006年製作の映画)
4.4
この映画には2匹のネズミが登場する。

コリン(マット・デイモン)とビリー(レオナルド・ディカプリオ)は互いに互いの組織に潜入し、情報を盗み取る。

それぞれが潜入する組織は警察とマフィアである。片方はマフィアの親玉コステロ(ジャック・ニコルソン)を警察の手から逃がそうとし、もう片方はコステロを逮捕するために彼に取り入ろうとする。

2匹のネズミというと『007 スカイフォール』のラウル・シルヴァの台詞を思い出す(ボンドと自分自身を生き残ったネズミに例えていた)が、本作のネズミたちはスペクタクルのない、よりリアルな世界で戦っている(車も時々しか爆発しない)。その現実味こそ、こちらに訴えかけてくるものが大きい理由なのだろうか?これがリアルな「スパイ映画」なのだろうか?

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本作は舞台こそリアルであるが、実はその設定はかなり突拍子もない。コリンとビリーがそれぞれの組織に潜入するまでは現実にもあり得るかもしれないが、彼らがもう一方のネズミを互いに探し出そうとして失敗し、最終的に作品の要所で対峙することになるなんて、普通では考えられない。

それでもこの作品全体を通して、全てを包み込むかのような説得力があるのはジャック・ニコルソンの演技によるところが大きいのではないかと思う。彼の演技はとてつもなく上手い。一本芯の通った狂人コステロを見事に演じている。くるくる変わる表情は多分に表層的であり、その裏側に得体の知れないものを潜めているような印象を抱かせる。彼が登場するシーンでは、その場の空気全体がニコルソン色に染められてしまうのだ。

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絶対的な王者であるコステロの前で、コリンとビリーはどう立ち回るのか?果たしてネズミだと暴かれてしまうのだろうか?緊張感を持った150分はあっという間に過ぎ、気付いたらかなり画面にのめり込んでいた(しばらくTVの前で正座していることを忘れ、脚の血流が止まってしまうくらいに)。

ストーリーはラストまで骨太であり、気を抜くことは許されない。話が尻すぼみになることもなく、見事収束している点に脚本の巧さを感じた。技巧的かつ分かりやすい映画に仕上がっているのはマーティン・スコセッシ監督の技だろうか。

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ところで主演の3人の顔は似た系統だと思った。ニコルソンとディカプリオなど、既に似ていると言われているが、同じ画面に並ぶとやっぱり似ている。だから、ニコルソンが「俺のようになれるか?」と聞き、ディカプリオが「なれる。でもならない。」と答えるシーンではニヤリとしてしまった。これは非常に示唆的なシーンである。マフィアに入り、組織の構成員としてニコルソンと同じような顔をしているビリー(ディカプリオ)が、警官としての信念は曲げない意志を表明しているかのようだった。