カツマ

ディパーテッドのカツマのレビュー・感想・評価

ディパーテッド(2006年製作の映画)
4.2
嵐が来る。それはヒタヒタと忍び寄り、一人の人間の存在などアッサリと消滅させてしまう。戦争が始まる。一発の銃弾に一つの命を奪わせる。ダブルスパイが巻き起こす闇の戦争。ローリングストーンズのギミーシェルターが予言されたレクイエムのように鳴り響く。
(ローリングストーンズ 、ギミーシェルターの歌詞より引用したものをアレンジ)

マーティン・スコセッシがついにオスカーを獲得した作品として、彼の長いキャリアの中でも非常に重要な作品だ。『インファナル・アフェア』のリメイクだが、そこはスコセッシ流。完全にギャング映画へと姿を変えており、一発の銃弾が重要な人物の命でさえもバッサリと刈り取ってしまうのだ。明日なきスパイ達が明日を奪い合う、最後まで生き残るネズミは誰だ。

〜あらすじ〜

マサチューセッツ州ボストン南部サウシーを裏で牛耳るフランク・コステロは、子供の頃から目をかけてきた若き懐刀コリン・サリバンを州警察署内にスパイとして送り込む。また時を同じくして警察側もコステロ側に新人警官ビリー・コスティガンを送り込むことに成功。コリン、ビリー共に組織内で信頼を獲得、お互いに相手組織の情報は筒抜け状態となる。
だが、コステロも警察もバカではなかった。組織内にスパイ(ネズミ)が潜入していることに気づいた両組織は、ネズミの燻り出しに躍起になっていき・・。

〜見どころと感想〜

レオナルド、マット・デイモンといった比較的ポップなハリウッドスターを起用しながらも、完全にスコセッシ色に染め切る濃紺のハードボイルドに仕上がった。
レオナルドは完全に演者として一皮剥けた演技を見せ、ニコルソンとも台頭に渡り合うほどに。『シャイニング』ばりの顔芸で異形に迫るニコルソンは、楽しんでやってるとしか思えないほどの怪演(笑)スター俳優達の長所を引き出す監督の手腕もさすがだ。

そしてスコセッシといえばやはり音楽。今作でもストーンズを筆頭にスコセッシのロック愛が炸裂しており、ともすれば流血でドロドロになりそうな重苦しいシーンをスタイリッシュに刷新。内容は重いはずだが、重さを感じさせない演出が徹底されていたと思う。すでに墓標には死にゆく男たちの名が刻まれた。あとはその死に様を描くのみだ。
カツマ

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