Tutu

ファイト・クラブのTutuのレビュー・感想・評価

ファイト・クラブ(1999年製作の映画)
4.5
そこそこ良い職業に就き杓子定規なモデルルームのような部屋に住み、物質的には満ち足りた生活を送る主人公の精神は、生への実感を失いカラカラに干からびた結果が不眠症として顕在する病的な状態にあった。そんな時に出会ったタイラーはほぼ初対面の主人公に対して「自分を殴れ」と迫るかなりイカれた男だった。非日常的な「ただの殴り合い」に精神の潤いを見出した主人公はタイラーと共に「ファイト・クラブ」を結成し、似たような境遇の男達を集めては夜な夜なファイトを繰り返していたが、カリスマ的なタイラーと彼を盲信するメンバーによってクラブは次第に反社会的な色を濃くしていく。

毎度思うことではあるが、フィンチャー監督の、自分の作品に色々な要素を詰め込んでかつ破綻せずしっかり2時間ちょっとに収めてくるという、その手腕に吃驚する。主人公が不眠に悩む話かと思いきや、様々な病気に苦しむ人達の会を持ち出し人間観察でもさせそうな流れにしかけつつ、生の漲る殴り合いや崩れゆくビルに物質主義への警鐘を込め、タイラーの正体には人間が持つ病的な精神の怖さを感じることができる。

日常という要素のすべてを問題視した結果、浮き出てくる非日常を結実させたラスト、という感想が出てくる、ついでにいつも通りクスッと笑えるユーモアで飽きさせず観させてくれる、そんなフィンチャー監督の、これは最高傑作ではないかなあと個人的には。セブンもゴーン・ガールも良かったけど、これが一番かもなあ。

とにかく色々な要素が詰まってるので、いちいち「これはあれっぽいな」と思うものが浮かんできたのも面白かった。そもそも題名からして「ガチンコファイトクラブ」を思わずにいられなくて、そのせいで本作を避けたりしていたりもしたし、最初の「〜の会」に出まくるのは『永遠の僕たち』みたいだな、と思ったり、クラブが反社会的集団になっていく様子に『オメガトライブ』という漫画を思い出したり。
似てるのは各作品のほんの一部でしかないけど、そのほんの一部がフィンチャー作品に集まるとこんな作用の仕方になるのか、という面白さ。手垢のベタベタついたタイラーの正体も含めて。

生きる実感を感じるのは難しい。それを物に依存することの危険はもちろん分かるけど、だからと言って性や破壊の衝動に身を任せるのが人間としてあるべき姿かどうか。ほんの2日前に軽井沢へ行って物欲を発散させてきた僕にとっては荷が重い問題である。買い物たのしー☆