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ファイト・クラブのmegurosのレビュー・感想・評価

ファイト・クラブ(1999年製作の映画)
4.7
20年ぶりに鑑賞。Dommune Radiopediaでの町山さん解説も聞いた。

公開は99年。消費社会の進展によって都市が漂白され生の実感が薄れていたこの時期、肉体の痛みによって生の感覚を取り戻し、社会の欺瞞を暴かんと破壊活動を行ったファイトクラブは現実にも多くのフォロワーを生み出した。その後、インターネットが本格到来する中で、このような社会の外側の受け皿はサイバースペースに広がっていき、現実の宗教団体が弱体する一方で、Qアノンへと繋がっていく。

ファイトクラブにおいてタイラー•ダーデンは本当に存在するのか不確かな存在だが、それはQは誰なのか?と同じで、明確なリーダーが存在しない組織のあり方をこの時点で既に描いていただけでなく、だからこそ一度走り出したら止める術がない、連邦議会襲撃に至るその恐ろしさをも予見していたかのようだ。

ファイトクラブをインターネット後の世界で描いたのがMr. Robotだと町山氏が指摘していたが、どちらも方法は違えどクレジット会社を標的とすることで徳政令を出していて、自分もさすがにそこでハッと気付いた。

主人公に名前がないのは、アメリカ先住民族たちが変性意識状態で行うビジョンクエストで名前を得るのと同じで、昔は親に付けられた名前は本当の自分の名前ではなく、行動によって名前をえるとされていたからだ、という話も面白かった(日本でも昔は幼名で、武将になったら自分で名前を付けた。タケシ軍団もそれ)

ブラッド•ピットの台詞はほぼアドリブらしく、監督のフィンチャーもいまだに意味が良く分からない部分もあるとのこと。天才ですね。
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