大手自動車メーカーでリコール調査の仕事をしている「僕」。
彼はその仕事柄からか不眠症に悩まされていた。
医者の勧めで重病患者のセラピーに参加し、泣くことで癒された彼は、それらの会合を渡り歩くようになる。
彼の不眠症が解消され始めた頃、同じく見物客のマーラと出会い、また眠れなくなってしまう。
そんなある日、彼は出張時の機内で自分と対照的で奔放な男タイラーと出会う。
色々あって意気投合した彼らは一緒に暮らし始め、生活を共にするなか、二人は夜の駐車場で殴り合いを行なうようになる。
それが地下格闘会「ファイト・クラブ」の結成に繋がり、いつの間にか孤独を抱える奴らの聖地となったクラブは、肥大化する一方だったが…。
普通のサラリーマンだった男が、痛みを伴う殴り合いを通して生きる力を取り戻し、本当の自分に目覚めてゆく物語。
役名のない主演のエドワード・ノートン、男の汗臭い色気を発散するブラッド・ピット、悪性の病巣のように暗く重いヘレナ・ボナム・カーター。
演技力は言わずもがなの俳優陣も最高のキャスティングだ。
一握りの富裕層だけが消費する社会に対する、その社会の底辺で生きる者たちの反逆。
暴力的なシーンは多いが、それはテーマの一要素でしかなく、より原始的で根元的な人間性について描いているのだと思う。
本当の意味で生きる(活きる)とは何なのか、それを提言しているのだろう。
そして、驚きの展開のあと訪れるラストシーン。
破壊と再生が同居するかのようなその映像は、妙な爽快感を伴って心に残り、不思議と活力が涌いてくるような気がした。
ハナマル!
2021/11/25