「僕は物質的な消費社会から解放された価値観です」
観終えた直後、そんな気分になっていた。
挑発的なブラック・ユーモアに満ち溢れた、スタイリッシュで哲学的な映画。
2000年1日1日。
横浜の中華街で大晦日を過ごし、新たな年を迎えた朝、電車での帰宅途中、何故だか無性に映画が観たくなり、日比谷の映画館の初回上映に飛び込んだ。
「セブン」を観て大ファンとなっていた、デヴィッド・フィンチャーとブラッド・ピット。
彼らが再び組んだ、という前情報のみだったので、ほぼ真っさらな頭で観ることができた。
現代社会における価値観への警告、主人公によるナレーション、遊び心のある斬新な映像、その映像と見事に融合した音楽、個性的で洒落た衣装、皮肉の効いた台詞、豊かなエピソード、カタルシスを覚える結末。
鑑賞中はずっと、作品の魅力に殴られっぱなしの興奮状態だった。
その興奮は「トレインスポッティング」にも通ずるもので、何度観ても、全く色褪ることなく、楽しませてくれる。
マーク・レントンがそうであったように、本作のタイラー・ダーデンのカリスマ的な魅力には喜んで、ノック・アウトされてしまう。
もっとだ、もっと殴ってくれ、となる。
クレジット会社のビル群の崩壊と共に流れる、Pixiesの「Where Is My Mind」には、積み重なってしまった日々の鬱屈が浄化される気分。
私が戦ってみたい歴史上の人物は、太宰治です。