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ファイト・クラブの会社員のレビュー・感想・評価

ファイト・クラブ(1999年製作の映画)
3.0
消費文明の波に揉まれながら、完璧な生活を追い求める主人公は、救いのない平凡な日々の中、不眠に苦しんでいた。
ある日、自由気ままに生きるタイラ-という人物に出会い、共に暮らすことになる。二人を繋ぐものは、殴り合いであった。
日常の生活では味わうことのできない痛みを追い求めるのは二人だけではなく、いつしか人々は、人知れず暴力を解放する場、ファイトクラブに集うようになる。
タイラ-は組織のリーダーとして、次々に命令を出し、ファイトクラブのメンバーはいつしかタイラ-の軍団と化していく。それは後に、リーダーなくしても統率のとれた、自律した集団として動き始めていく。


死期が近い人々や重い病に苦しむ人々は、同じ悩みを抱えた者同士集まり、慰め、支え合うことができる。物語前半、主人公はこうした会合に参加することで、生を感じることができた。しかしそれは偽りの逃避であり、束の間の休息でしかない。
現代社会においては財力や地位がものをいうため、暴力や性といった根元的な男性的要素においていくら優れていたとしても、上下関係とは無関係である。そうした欲求を解放してくれるファイトクラブは、社会的低層にいるブルーカラーはもちろん、居場所のないホワイトカラーにも受け入れられていく。
物語で解き明かされているように、暴力の矛先は自分自身であるはずだった。相手を殴ることよりも、殴られた痛みを通じて生の歓びを感じることの方が重要であった。しかし、社会的に抑圧された人々の集まりは、いつしか外へとその矛先を向けてしまう。ネタバレを避けるとここまでではあるが、登場人物一人一人の存在意義を見ると、文明社会で生きる我々の在り方について示唆に富む映画であることがわかる。
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